自動車エアコン(カーエアコン)のACボタンの意味
ACボタンはどう使い分ければいいの?
自動車のエアコンパネルに付いている「ACボタン」。このボタンの使い方に悩んでおられる方は結構多いのではないでしょうか?
今回は、ACボタンの意味とその適切な使い方についてご説明していきます!この記事を読むことによって、運転中に適切に空調を使用することができるようになります!
現役の自動車エアコン開発エンジニアが解説
私は、現役の自動車開発エンジニアです。
空調領域の製品開発の経験もあり、今回は皆さんが悩みやすいACボタンの使い方に焦点を当てて解説していきます。
ACボタンはコンプレッサのON/OFFの切り替えスイッチ!
コンプレッサが動くと冷凍サイクルが作動
まず結論から説明すると、ACボタンはコンプレッサのON/OFF切り替えスイッチです。ACボタンをONにするとコンプレッサが動き、OFFにすると止まります。
では、コンプレッサがONすると、自動車にはどんな変化が起こるのでしょうか?正解は、冷凍サイクルが作動します。冷凍サイクルとは、冷媒が状態変化(気体⇄液体)しながら循環するための回路のことを指します。
一般的に、冷凍サイクルは、①コンプレッサ、②コンデンサ(室外機)、③エキスパンションバルブ(膨張弁)、④エバポレータ(室内機)の4つの部品から構成されています。


コンプレッサは、この冷凍サイクルの心臓部に当たる部品であり、コンプレッサがONされると冷媒が回路中を流れるようになります。
冷媒の液体から気体への状態変化による気化熱を利用できる
では、冷媒が冷凍サイクル内を循環すると何が起こるのでしょうか?
冷媒が循環し始めると、冷媒は気体から液体、また液体から気体と状態変化を繰り返すようになります。そのとき冷媒は、液体から気体に状態変化するときに「気化熱」を利用できるようになります。
気化熱とは、冷媒が液体から気体に蒸発するときに周辺から奪う熱のことを指します。つまり、冷媒が気化熱を受け取ると周りはエネルギーを奪われるので温度が下がります。
真夏に道路に打ち水をすると涼しく感じるのも、この気化熱を利用しているからです。道路に撒いた水が水蒸気に状態変化するときに、周辺の空気からエネルギーを奪うため温度が下がるのです。
冬場の暖房ではACボタンは原則OFF
ACボタンをOFFにすると燃費よく暖房できる
反対に、冬場の暖房使用時では原則ACボタンはOFFで大丈夫です。
カーエアコンの仕組みにあまり詳しくない方は、暖房のときもACボタンを常時ONにしている場合がありますが、これをするとコンプレッサが常に駆動することになるので、燃費が悪化してしまいます。
エンジン自動車の暖房では、温まった冷却水を使って暖房するので通常はコンプレッサを駆動させる必要はないのです。
フロントガラスが曇ってきたらONにして除湿暖房
しかし、例外があります。
暖房を使用していると雨の日などの湿度の高い日は、フロントガラスが曇りやすくなります。湿度が高いと露点温度が上がるため、結露しやすくなるのが原因です。
ガラスが曇ってきたときは、ACボタンをONにしましょう。そうすると「除湿暖房」というモードになって、暖房しながら除湿ができるようになります。
具体的には、温まった冷却水とヒータコアという部品が熱交換し、エアコンダクト内の空気を暖房します。その後、エバポレータという部品で除湿を行い、暖かくかつ湿度の低い空気を作り出しています。
除湿することによって、フロントガラスの曇りが取れるので積極的に活用して、安全運転を心掛けましょう!
夏場の冷房では常にONで運転
まずは冷房編です。
夏場に冷房を使用するときは、ACボタンは常にONにしなければなりません。なぜなら、冷房の原理は冷凍サイクルによる冷媒の気化熱を利用するためです。
もし、ACボタンをOFFにした場合は、それはただの扇風機です。冷媒が冷凍サイクル内を循環していないため、気化熱はまったく使えず、ブロアファンからの風が吹き出し口から出ているだけになるので、温かい風が出てくるだけでまったく冷えません。
まとめ
今回は、カーエアコンのエアコンパネルに付いているACボタンの役割について解説しました。
要点を以下にまとめます。
- ACボタンはコンプレッサのON/OFF切り替えスイッチ
- コンプレッサがONすると、冷房の原理である冷凍サイクルが作動する
- 冬場の暖房では、原則はOFFでよい
- しかし、フロントガラスが曇り始めたらONに切り替えて除湿暖房しよう
- 夏場の冷房では、ACボタンは常にON
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