夏の暑い季節になると、多くの人がエアコンを頼りにします。しかし、「エアコンの電気代は、つけっぱなしが良いのか、それとも切り替えが良いのか」については、非常によくある疑問です。
この記事では、それぞれの方法の技術的なメリットとデメリット、そしてエネルギー消費の観点から解説します。
エアコンの基本的な動作原理
まずはエアコンの基本的な動作原理から見ていきましょう。エアコンは基本的に熱ポンプシステムで、熱を部屋の中から外へ移動させます。エアコンの動作は、大きく分けて以下の4つのプロセスで構成されています。
- 圧縮: 冷媒(通常はフロン)がコンプレッサ(圧縮機)によって圧縮され、高圧高温のガスとなります。
- 凝縮: 外部のヒートエクスチェンジャー(コンデンサー)で冷却され、高圧低温の液体になります。この過程で部屋から吸収した熱が外部に排出されます。
- 膨張: エキスパンションバルブ(膨張弁)を通ることで急激に膨張し、低温低圧のガスになります。
- 蒸発: 内部のヒートエクスチェンジャー(エバポレーター)で吸熱し、再び高温高圧のガスになります。この過程で部屋の熱が冷媒に吸収され、部屋が冷やされます。


このサイクルが繰り返されることで、エアコンは部屋を冷やすことができます。
電気代はつけっぱなしと切り替えのどっちが安い?
エアコンの運転モードによりエネルギー消費は大きく変わります。つけっぱなしと切り替えのどちらが良いかは、具体的な状況によります。
つけっぱなしの場合
エアコンをつけっぱなしにすると、一定の温度を維持するために必要なエネルギーは比較的安定します。なぜなら、エアコンが部屋の温度を一定に保つためには、少ないエネルギーだけで十分だからです。しかし、長時間にわたってエアコンを稼働させると、それでも少なからずエネルギーを消費します。
切り替えの場合
エアコンを一旦停止し、再度起動すると、エアコンの冷媒サイクルが初期状態から始まるため、初動のエネルギー消費が大きいです。特に、部屋の温度が大きく上がった場合、エアコンは大量の熱を排出しなければならず、エネルギー消費が大きくなります。
しかし、エアコンをオフにしている間はエネルギー消費がゼロです。これは、特に外出するなど長時間エアコンを使わない場合には有利な点です。
こまめに切ると電気代が上がる理由をモリエル線図で説明
ここからはエアコンをこまめに切ると、かえって電気代が上がってしまう理由について技術的に解説をします。
その理由はコンプレッサの消費電力が増えるから
エアコンのスイッチをこまめに切ると、電気代が上がってしまう直接的な原因は、エアコンシステム内に入っているコンプレッサという部品の消費電力が増加するためです。
では、なぜこまめに切るとコンプレッサ消費電力が増加してしまうのでしょうか?
コンプレッサが吸入する冷媒の密度が増加するから
エアコンを切るとコンプレッサの回転が止まってしまうため、それまで高圧と低圧に分かれていた冷媒の圧力が1つの圧力に均圧しようとします。
つまり、高圧側の圧力は下がり、低圧側の圧力が上がり、ある1つの圧力に互いに近づいていきます。

モリエル線図を用いて説明すると、図のように高圧が下がり、低圧が上がっていきます。
低圧が上昇すると、コンプレッサが吸入するときの冷媒の圧力も高くなっていくということを意味しています。
では、コンプレッサの吸入圧力が上がるとなぜ消費電力が上がるのでしょうか?
冷媒圧力が上がると冷媒密度も上がるから
その答えは、冷媒圧力が上昇すると冷媒密度も上昇するからです。冷媒密度が上がるということは、コンプレッサはより濃い冷媒を吸うことになります。
したがって、コンプレッサはより濃い冷媒を圧縮するためには、より大きなエネルギーが必要になり、消費電力が増加するというメカニズムです。
もう少し厳密に説明すると、コンプレッサの消費電力は理論的には冷媒密度に比例して増加していきます。そのため、冷媒密度が2倍になれば消費電力も2倍になります。
つまり、エアコンのスイッチを切るたびに、冷媒の低圧が上昇し、次にスイッチを入れたときにコンプレッサが密度の高い冷媒を吸うことになるため、電気代が高くなります。
つけっぱなしにするとコンプレッサは常に密度の低い冷媒を吸入できる
言い換えれば、エアコンをつけっぱなしにしておけば、コンプレッサはずっと密度の低い(圧力の低い)冷媒を吸入することになるため、圧縮するのが楽になります。
これが短時間の外出であれば、つけっぱなしの方が電気代が安くなると言われている理由です!
総合的な見地から
総合的に見ると、エアコンの電気代は使用状況や個々のモデルによります。一般的には、部屋の温度が大きく変動しない場合、つけっぱなしの方がエネルギー効率が良いとされています。
一方、長時間部屋を不在にする場合は、エアコンをオフにしてエネルギー消費をゼロにする方が効率的です。
また、エネルギー効率だけでなく、室内環境の快適さも考慮に入れる必要があります。つけっぱなしにすることで一定の温度を保つことは、室内環境を快適に保つために有利です。
まとめ
今回は、エアコンの電源をつけっぱなしにしておくのか、こまめに切るのかどっちの方が電気代が安いのか?という疑問について、かなり技術的に解説をしました。
結論として、こまめにスイッチを切ってしまうと、次に起動した直後にコンプレッサに高い負荷が掛かってしまうことが電気代がかえって高くなってしまう原因です。
したがって、30分程度の外出であれば、むしろエアコンがつけっぱなしにした方がトータルの電気代が安くなりますよ!
- 短時間の外出なら、こまめに消すよりもつけっぱなしにのほうが電気代が安くなる
- こまめに消すとコンプレッサの消費電力が増加してしまう
- 消費電力が増加する理由は、コンプレッサが吸入する冷媒の密度が高くなって、圧縮するために多くのエネルギーが必要になるから
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