エアコンの節電は「温度を下げる」か「風量を上げるか」どっちがいいの?
なるべく電気代を抑えてエアコンを有効活用したい
最近は、非常に暑い日が連日続いていますね。
私の家でも日中はエアコンが欠かせない時期になってきました。皆さんも家や車の中でエアコンを付ける機会が増えていると思いますが、エアコンってやっぱり電気代が気になりませんか??
ただでさえ、最近はガソリン価格の高騰を背景に、電気料金が値上げされていますよね・・・。少しでも節電しながらエアコンを有効活用したい!という方はたくさんいらっしゃると思います。
「設定温度を下げる」と「風量を上げる」は電気代的にどっちがお得?
そこで、エアコンの電気代に関する疑問があります。エアコンのリモコンには、「設定温度」と「風量」の2つのボタンがありますよね?
感覚的に、「設定温度を下げる」、「風量を上げる」を押すと部屋や車室内がより冷房されるというイメージはあると思います。
では、これらのどっちが電気代を抑えられるのでしょうか?今回は、その疑問について技術的に詳しく解説していこうと思います!
自動車メーカーで空調開発をしている私がお答えします
私は、現在自動車メーカーの研究開発部門に所属しています。
特に、専門分野や空調開発や熱設計などの自動車の熱を制御する領域になります。今回は、エンジニア目線で、「設定温度を下げる」と「風量を上げる」の違いについて、様々な角度から解説していきます。
エアコンでなぜ冷房ができるの?
エアコンで冷房できるのは冷媒の気化熱
最初に、エアコンの原理から簡単に説明します。
エアコンは冷凍サイクルというループ状になった回路の中で、冷媒を状態変化させながら循環させることによって冷房・暖房を実現しています。
そのときに重要なキーワードが「気化熱」と呼ばれる現象です。冷媒が液体から気体に状態変化をするときに、まわりから熱を奪います。すると、熱を奪われた側の温度が下がります。これが冷房の原理です。
エアコンの場合は、冷媒が奪う側、空気が奪われる側になります。
より理論的に理解した方はモリエル線図を読めるようになろう
空調の原理をより理論的に理解したい場合は、「モリエル線図」を読めるようになる必要があります。
以下に、モリエル線図の見方についてわかりやすく解説している記事があるので、こちらをご参考にしてください。
結論:設定温度を下げるより、風量を上げる方が節電効果が高い
まずは、今回の記事の結論からです。
- エアコンの電気代は、「風量を上げる」方が「設定温度を下げる」よりも節電効果が大きい!
- ただし、風量をいくら上げても、理論的には設定温度以下には冷房できない(設定温度により早く冷房できるだけ)
節電のためには、まず風量を上げる!
エアコンの電気代は、設定温度を下げるよりも風量を上げる方が節電になります。
まず、「設定温度を下げる」場合と「風量を上げる」場合で、何が違うのでしょうか?
エアコンの設定温度を下げるとコンプレッサの回転数が上がる
エアコンの設定温度を下げると、エアコンの原理である冷凍サイクルの構成部品の1つである「コンプレッサ」の回転数が上がります。

コンプレッサは、冷媒を高圧に圧縮して冷凍サイクル内に冷媒を循環させるための、人間と言うと心臓のような役割を果たしています。
実は、このコンプレッサという部品は非常に大きな電力を消費します。エアコンの消費電力の大部分をコンプレッサが占めていると言っても過言ではありません。
そのコンプレッサの回転数が上がるとエアコンの電気代の増加に直結してしまうのです。
コンプレッサの回転数が上がると冷媒の温度が下げる
もう少し専門的な解説をしましょう。
コンプレッサの回転数が上がると、室内機(エバポレータ)に流入する冷媒の温度が下がります。さらに、厳密な言い方をするとコンプレッサの回転数が上がるとエバポレータに流入する冷媒の圧力が下がることで、蒸発温度が下がります。
海抜0mの場合、水は100度で沸騰するのに対して、富士山の頂上(大気圧より低い)では、水はより低い温度で沸騰するのと同じ原理です。
より冷たい冷媒を室内機に送り込むことによって、より低い設定温度に対応しようとしているのですね。
エアコンの風量を上げるとブロアファンの回転数が上がる
一方、エアコンの風量を上げた場合は、室内機に内臓されている「ブロアファン」の回転数が上がります。
ブロアファンを回転数が増加するということは、1秒間にたくさんの冷媒と室内の空気が触れ合うことにより、その結果としてより大きな冷房能力を出すことができます。
ブロアファンの消費電力はコンプレッサの消費電力と比べるとずっと小さいので、ブロアファンの回転数を上げた方が、より節電効果を得ながら冷房することができます!
コンプレッサ回転数とブロアファン回転数を上げたときの電気代以外の差
では、ここからは電気代の差について解説していきます。
上記の説明だけを聞くと、設定温度は変えずに風量だけ増やしていけばいいのでは?、設定温度なんて下げる意味あるの?と思われる方もいらっしゃると思います。
もちろん設定温度を下げるメリットはあります!ここからは、そのメリットについてわかりやすく説明していきます!
コンプレッサ回転数を上げないと、冷媒温度は下がらない
これは非常に重要な内容です。
室内機から出る空気をより冷たくしたい(設定温度を低くしたい)ときは、いくらブロアファンの回転数を上げてもだめです。
コンプレッサ回転数を上げて初めて、冷媒温度が下がり、結果的に室内機から出る空気の温度下がります。

したがって、もっと部屋・車室内の温度を下げたいというケースでは、風量を上げるのではなく設定温度を下げて、冷媒温度を下げることが効果的です!
そんなときは、電気代のことは気にせず、設定温度を下げましょう!熱中症になってしまっては本末転倒です。
風量の大小の差は、設定温度に達するまでの時間を決めているだけ
風量の大小は、設定温度に達するまでの時間に影響します。
風量が小さいと設定温度に達するまでの時間は長くなり、風量が大きいとその時間は短くなります。

ここで重要なことは、「風量をいくら上げても設定温度以下には冷房できない」ということです。
つまり、いくら風量を上げても快適な温度が得られない場合は、設定温度を下げて部屋の温度を下げましょう!
設定温度や風量で調整すると冷房能力と電気代のトレードオフになる
結局、設定温度や風量で調整すると冷房能力と電気代のトレードオフになってしまいます。
つまり、設定温度を上げたり風量を下げたりすれば、電気代は抑えることができます。しかし、その分冷房能力は落ちてしまうため、なかなか冷えなかったり冷えるまでに時間が掛かったりします。
したがって、おすすめの節電対策はエアコン以外の部分で行うことです!例えば、窓ガラスの断熱性を上げたり、遮熱カーテンを付けるなどの対策があります。
また、部屋の湿度が高いと冷房が効きにくくなってしまうので、除湿器などで部屋の湿度を下げたりすることを重要です。
以上のように、部屋全体・車室内全体で節電対策をすることが最もおすすめの方法になります。
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