冬場はエアコンで暖房すると空気が乾燥する
だんだん寒くなってきて、家で暖房を付けることも増えてきたのではないでしょうか?
部屋の暖房にはいろいろな種類がありますが、中でもエアコンを使って暖房をする人も多いと思います。皆さん、エアコンの暖房には空気が乾燥するというイメージを持っているのではないでしょうか?
実際に、エアコンを部屋を暖房すると空気が乾燥するというデメリットがあります。空気が過度に乾燥してしまうと、喉の不調や肌の乾燥など人体に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。
今回は、なぜエアコンで暖房すると空気が乾燥してしまうのか?さらに、それを防ぐためにはどのような対策を取るべきなのか?について以下で解説をしていきます。
現役の自動車開発エンジニアが教えます
私は、現役の自動車開発エンジニアをしています。
自動車開発とエアコンなんて全然関係ないじゃないか!と思われる方もいらっしゃると思いますが、自動車開発においてもエアコンの知識が非常に重要です。もう少し厳密に言うと、エアコンの原理になっている冷凍サイクルやヒートポンプサイクルの知識ですね。
特に、電気自動車になるとエアコンはバッテリの寿命を決めるファクターにもなるため、今後ますます重要性が増していきます。
今回は、自動車開発をしている自分が暖房で乾燥する原理について解説します。
エアコンによる暖房で空気が乾燥する理由
空気の温度上昇による相対湿度の低下
暖房で空気が乾燥していしまう原因は、部屋の相対湿度が低下するからです。
まずは、相対湿度がどのようなものかを説明します。相対湿度とは空気が含むことのできる最大の水蒸気量と現在の水蒸気量との比率のことです。

バケツで例えるとイメージが湧きやすいです。1Lの大きさのバケツがあったとしましょう。これが空気が含むことのできる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量と呼ぶ)となります。そのバケツの中に500mLの水が入っていれば、相対湿度は50%となります。また、バケツに1Lの水が入っていれば相対湿度は100%となります。
相対湿度が100%を超えることはありません。バケツに1.5Lの水を入れても500mLは外に溢れてしまいますよね?その溢れた分は、水蒸気ではなく液体の水として存在することになります。これが「結露」の正体です。
飽和水蒸気量は温度が上がると増える
空気の飽和水蒸気量は温度によって変化します。
空気の温度が高ければ高いほど、飽和水蒸気量は増加するのです。つまり、空気の温度が上がるほどバケツの大きさが増えていくということです。
エアコン暖房では加湿されない
エアコンの暖房はコンプレッサで圧縮して高温になった冷媒を部屋の空気と室内機(コンデンサ)の中で熱交換させて実現しています。


したがって、空気の温度だけが上昇して、加湿はされません。つまり、バケツの大きさだけが大きくなるのに、中身の水の量はそのままという状況になります。
そうなれば相対湿度は下がってしまいますよね?これがエアコンの暖房で空気が乾燥してしまう理由です!
他の暖房器具では乾燥しないの?
石油ファンヒーターは同時に加湿もできる
石油ファンヒーターは暖房と加湿が同時にできるため、エアコンよりも空気が乾燥しにくいという特徴があります!
石油ファンヒーターは燃料の石油と空気中の酸素を化学反応させて、熱エネルギーを生み出しています。石油と酸素が化学反応すると、二酸化炭素と水(水蒸気)が生成されます。
この水蒸気が部屋を加湿してくれる役割を持っているのです。したがって、石油ファンヒーターはエアコンよりも乾燥しにくいです。
電気ヒーターはエアコンと同様に乾燥する
電気ヒーターはエアコンと同様に空気を乾燥させてしまいます。
電気ヒーターは電気エネルギーを熱エネルギーに変換して暖房しているだけなので、加湿する機能はありません。これはエアコンと同じ特徴ですね。
しかし、エアコンとの違いは電気ヒーターは部屋の一部をスポット的に暖房することに向いている器具というです。一方、エアコンは部屋全体を暖房することに向いているため、エアコンの方が部屋中の空気を乾燥させてしまいます。
空気の乾燥を防ぐための対策
最後に、空気の乾燥を防ぐための対策を3つ紹介します。
加湿器を設置する
まず1つ目は、部屋に加湿器を設置することです。これはもはや王道の対策ですね。エアコンには「暖房」、加湿器には「加湿」の機能をそれぞれ持たせることによって、乾燥を防ぎます。
加湿器の加湿能力は非常に高いですが、フィルター掃除などのメンテナンスが少し面倒ではありますね。
洗濯物や濡れタオルを室内に干す
2つ目は、洗濯物や濡れタオルを部屋に干すことです。加湿器が家にない場合の代わりの対策として有効です。
メリットは、加湿器という高価な家電を買わなくても簡単に加湿効果が得られることです。デメリットは、干す量が少ないと寝ている間に乾いてしまい、途中で加湿効果が切れてしまうことです。また、洗濯物にカビが生えやすくなるというデメリットもあります。
マスクを付ける
3つ目は、マスクを付けることです。部屋の空気が乾燥していたとしても、口の周辺の空気をピンポイントで加湿してあげることで喉の乾燥を防ぐことができます。
今は、マスクの内側に加湿効果のあるシートが入った商品も販売されていますよね。このようなマスクを付ければ、喉の乾燥は抑えることができるでしょう。しかし、肌の乾燥は防ぐことはできません。
また、今はコロナ禍の世の中のため、外でマスクを付けることが多いと思います。なので、家の中でもマスクをするのはさすがに辛いですよね。
したがって、乾燥を防ぐ対策として、1番目の加湿器の設置か2番目の洗濯物や濡れタオルを干すという2つの対策が現実的ですね。
まとめ
今回は、エアコンの暖房で空気が乾燥してしまう理由とそれを防ぐための対策を解説しました。要旨を以下にまとめます。
- 空気の乾燥は相対湿度の低下が原因
- エアコンには加湿機能がないため、水蒸気量は変わらず飽和水蒸気量だけが増えてしまう
- 石油ファンヒーターは暖房と加湿の両方の機能を持つ
- 対策として、①加湿器を設置する、②洗濯物や濡れタオルを部屋に干すという2つが現実的
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