エアコンの風量と電気代の関係は?
風量と電気代の関係はピンと来ない
急激に寒くなってきて、部屋でエアコンを付けているご家庭が増えているのではないでしょうか?
エアコンのリモコンには、設定温度とは別に風量を選択できるスイッチも付いています。この風量と電気代の関係はどのようになっているのでしょうか?
冷房の場合、設定温度を下げる(暖房の場合は、設定温度を上げる)と電気代も一緒に上がるのはなんとなく想像できると思います。これはその通りです。
しかし、風量と電気代の関係はわかりにくいのではないでしょうか?今回の記事は、そのような疑問に答えるために用意しました。
私はカーエアコン開発の経験があります
私は、自動車開発エンジニアでカーエアコンの開発経験があります。
エアコンの構造はカーエアコンと家庭用のルームエアコンで共通しています。したがって、同じ考え方が適用できるのです。
そこで、今回は私が風量と電気代の関係とその理由について解説していきます。
エアコン(冷凍サイクル・ヒートポンプサイクル)の仕組み
まずは、簡単にエアコンの仕組みから説明します。
エアコンで冷房(冷凍サイクル)や暖房(ヒートポンプサイクル)ができるのは、冷媒が液体から気体に状態変化する熱(気化熱)や気体から液体に状態変化する熱(凝縮熱)を利用しているからです。
この原理の詳細は説明は、以下の記事で書いているのでご参考にしてください。



風量を上げると電気代も上がる
結論から言うと、エアコンの風量を上げれば電気代も併せて上がります!風量と電気代は関係ないという方がいらっしゃいますが、それは違います。
ちなみに、カーエアコンでももちろん同様です。風量を上げれば上げるほど燃費は悪化していきます。では、どうして風量を上げると電気代も上がってしまうのでしょうか?
理由①:室内機のブロアファンの消費電力が増えるから
まず1つ目の理由は、ブロアファンの消費電力が増えるからです。
ブロアファンとは、室内機の中に入っているファンのことです。リモコンで風量を上げると、このブロアファンの回転数が増加します。回転数は内蔵されているモータで制御しているので、回転数が上がるとモータの消費電力も増えるため、電気代が上がってしまいます。
理由②:コンプレッサ(圧縮機)に掛かる負荷が増えるから
2つ目の理由は、コンプレッサが駆動するための負荷が風量を上げることによって増加するからです。コンプレッサとは圧縮機とも呼ばれ、エアコンの配管内に充填されている冷媒を圧縮して吐出し、回路内を循環させる機能を持っています。


コンプレッサの負荷はコンプレッサが吸い込む冷媒の密度によって左右されます。密度が高い冷媒を吸い込めば吸い込むほど、圧縮するために必要なエネルギーが増加し負荷が増えます。
風量を上げると、コンプレッサが吸い込む冷媒の圧力が上がります。圧力と密度は相関関係にあるので、圧力が上がって密度が上がって、結果的にコンプレッサの負荷が上がるというメカニズムです。
コンプレッサ負荷増加はエネルギー保存則で説明できる
風量増加によるコンプレッサの負荷増加の理由は、エネルギー保存則から説明できます。
ここでのエネルギー保存則とは、空気が冷媒から奪われるエネルギーと冷媒が空気から奪うエネルギーは保存するということです。
もう少し掘り下げて説明すると、風量を上がるとそれだけ冷たい冷媒と接触する空気の量も増えます。つまり、空気が冷媒に奪われるエネルギーが増えたということです。そうなれば当然、冷媒が空気から奪ったエネルギーも増えないとエネルギー保存則が成立しませんよね?
したがって、冷媒が空気から奪うエネルギーを増やすために、コンプレッサの負荷が増えているのです。より詳細な理由は、以下の記事に記載しています。
簡単に実践できるエアコンの電気代節電対策
- エアコンの風向を冷房は上向き、暖房では下向きにする
- カーテンの長さを部屋の高さに合わせる
- 遮熱機能の付いたカーテンに交換する
- 夜間であれば雨戸を閉めて、より遮熱効果を高める
- 部屋を加湿する(暖房時)
エアコンの風向を冷房は上向き、暖房では下向きにする
エアコンから出る空気は対流現象によって、冷房の場合は上から下に、暖房の場合は下から上に空気の流れを発生させます。
したがって、冷房の場合は風向を上向きにしておくと、自然に上から下に空気の流れができて、効率的に部屋の中を冷房できます。
暖房の場合は、風向を下向きにすることにより、下から上の流れを作り出すことが効果的です。
カーテンの長さを部屋の高さに合わせる
1つ目は、カーテンの長さを部屋の高さに合わせることです。
たまに引越しする前の部屋で使っていたカーテンを引越し後の部屋でも使っている人がいますがおすすめしません。
それは、部屋の高さとカーテンの長さが違うからです。カーテンが短いとしたから熱気(冷房の場合)や寒気(暖房の場合)が部屋に入り込んでしまいます。
すると、エアコンはよりエネルギーを使って空調しようとするので、電気代が多く掛かってしまうのです。
遮熱機能の付いたカーテンに交換する
2つ目は、遮熱機能の付いたカーテンに交換することです。
現在、カーテンには遮光機能や遮熱機能などの様々な機能が追加された商品が出ています。その中でも遮熱機能のあるカーテンがおすすめです。
遮熱すると外からの暑い空気や冷たい空気がカーテンで遮られるので、エアコンの負荷を抑えることができます。
夜間であれば雨戸を閉めて、より遮熱効果を高める
3つ目は、夜間に雨戸を閉めることです。
雨戸は台風が来そうなときに閉めるというのが一般的ですが、遮熱効果にも優れています。
夜間であれば、日光を部屋に取り入れるニーズもないので、雨戸を閉めて遮熱機能の付いたカーテンをすれば、さらにエアコンの電気代を抑えることができますよ!
部屋を加湿する(暖房時)
4つ目は、暖房のときに限りますが、部屋を適度に加湿することも効果的です。
人間は同じ温度でも湿度が高い方が暖かく感じる性質を持っています。つまり、部屋の温度が25度に暖房するときも湿度20%のときよりも、湿度50%のときのほうが暖かく感じるのです。
したがって、適切な湿度に加湿することによって低い温度設定にしても暖かみを感じられるので、エアコンの電気代の節約になります。
まとめ
今回の記事の内容の要点は以下のようになります。
- エアコンの風量を上げれば電気代も上がる
- その理由は、ブロアファンとコンプレッサの消費電力が増加するから
- ブロアファンは内蔵されるモータの回転数が上がることで消費電力が増える
- コンプレッサはエネルギー保存則から、負荷が増加する
コメント