【MBD事例】モデルを使って空冷/油冷/水冷の冷却性能を比較

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自動車工学
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自動車における冷却方式には主に、空冷・油冷・水冷という3つの冷却方式があります。本記事では、まず最初にそれぞれの冷却方式の概要について説明します。次に、簡単なモデルを作って実際の冷却性能にどのような違いが生じるのか、そしてそれはなぜなのかを解説していきます。

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空冷/油冷/水冷の3つの冷却方式のメリット・デメリット

まずは上記の3つの冷却方式の概要を説明します。

空冷方式

空冷方式とは、空気を使って物体を冷却する方式のことです。空冷はさらに自然空冷強制空冷の2つに分類されます。

空冷方式のメリットは①コストが安いこと、②レイアウトの自由度が高いことです。自然空冷なら特別な部品は不要ですし、強制空冷でも空冷ファンを取り付けるだけで実現可能です。一方、デメリットは冷却性能が低いことです。詳細は以下で解説するのでここでは省略しますが、大きな発熱体の冷却には向いていません。以下で、自然空冷と強制空冷の概要を説明します。

空冷方式を採用している部品は、ラジエータやコンデンサ などがあります。

自然空冷方式

自然空冷は自動車が走ることによって発生する車速風を物体に当てることによって冷却する方式です。そのため、自動車が停車中は車速風が0になってしまうので熱伝達率が落ちてしまいます。

強制空冷方式

強制空冷は空冷ファンによって強制的に風を起こし、それによって物体を冷却する方式です。ファンを用いているので、停車中も風速を落とすことなく安定した熱伝達率を発生させ続けることができます

油冷方式

油冷方式はオイルを使って物体を冷却する方式です。エンジンやトランスミッションなどの回転部品では、焼き付きや錆を防ぐためにオイルを循環させているので、その経路を変えることによって油冷を実現させます。油冷のメリットは空冷よりも冷却性能が高いことです。しかし、水冷の冷却性能には劣ってしまいます。デメリットはオイルクーラーなどの追加の部品が必要になり、コスト増につながることです。

水冷方式

水冷は冷却水(クーラント液)を使って物体を冷却する方式です。冷却水の成分は主にエチレングリコールでできています。水冷のメリットは3つの冷却方式の中で最も冷却性能が高いことです。したがって、発熱量の大きな物体の冷却には水冷が用いられます。デメリットは冷却システムのコストも最も高くなることです。水冷を実現させるためには、最低でもラジエータ、ウォーターポンプという補機部品が必要です。場合によってはサーモスタットも必要になるケースもあります。そのため、システムも大型化する傾向にあります。

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モデルを作って実際に冷却性能を比較

モデルの前提条件

ここからは簡単なモデルを使って実際に冷却性能が、水冷>油冷>空冷になることを理論的に示します。比較するために閉回路中に温度一定の高温物体を1つ配置し、閉回路中を空気、オイル、冷却水のそれぞれの流体が循環するモデルを作りました。

図1:冷却性能の比較用モデル

図1は冷却性能を比較するために作ったモデルです。高温物体は常に100℃一定としましょう。そして、空気・オイル・冷却水の初期温度を40℃として、閉回路を循環させます。やがて、それぞれの流体は高温物体と同じ100℃に達しますが、それまでにどのくらいの熱量を吸熱できるかを比較します。吸熱できる熱量多ければ、それだけ冷却性能が高いことを示しています。

伝熱工学に基づいてモデリング

それぞれの流体の温度\(T_{air}[℃]\)、\(T_{oil}[℃]\)、\(T_{cool}[℃]\)は以下の式で計算できます。$$T_{air}=\int\frac{Q_{air}}{C_{air}}+T_{ini}$$$$T_{oil}=\int\frac{Q_{oil}}{C_{oil}}+T_{ini}$$$$T_{cool}=\int\frac{Q_{cool}}{C_{cool}}+T_{ini}$$ここで、高温物体からの移動熱量\(Q_{air}[\mathrm{W}]\)、\(Q_{oil}[\mathrm{W}]\)、\(Q_{cool}[\mathrm{W}]\)は熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]\)を用いて$$Q_{air}=h_{air}\cdot(100-T_{air})$$$$Q_{oil}=h_{oil}\cdot(100-T_{oil})$$$$Q_{cool}=h_{cool}\cdot(100-T_{cool})$$熱容量\(C_{air}[\mathrm{J/℃}]\)、\(C_{oil}[\mathrm{J/℃}]\)、\(C_{cool}[\mathrm{J/℃}]\)は$$C_{air}=\rho_{air}\cdot c_{air}\cdot V_{air}$$$$C_{oil}=\rho_{oil}\cdot c_{oil}\cdot V_{oil}$$$$C_{cool}=\rho_{cool}\cdot c_{cool}\cdot V_{cool}$$ここで、\(\rho[\mathrm{kg/m^3}]\)は密度、\(c[\mathrm{J/kg/℃}]\)は比熱、\(V[\mathrm{m^3}]\)は体積です。

簡単のために、\(V_{air}=V_{oil}=V_{cool}=1[\mathrm{m^3}]\)、\(h_{air}=h_{oil}=h_{cool}=1[\mathrm{W/K/m^2}]\)とします。また、空気・オイル・冷却水の密度と比熱は以下の表のように設定します。

 

 密度比熱
空気1.0911008
オイル0.8761955
冷却水1.1002474

シミュレーション結果の考察

図2:空冷・油冷・水冷の温度変化

図2は、空冷・油冷・水冷のそれぞれの流体温度の時系列を示しています。比熱の小さな空気が最も早く温度上昇をしている一方、比熱が最も大きい冷却水は温度上昇が緩やかになっています。このように、比熱が大きな流体ほど熱容量が大きくなり、温度上昇率が緩やかになります。

図3:空冷・油冷・水冷の吸熱量

図3は90s間のトータルの吸熱量を示しています。温度上昇が早い空冷はすぐに高温物体との温度差がなくなってしまうため、吸熱できる量も少なくなります。一方、水冷は長い間高温物体と温度差を付けることができるので、トータルの吸熱量は最も多くなっています。比熱が空気と冷却水の中間に位置しているオイルは吸熱量も空冷と水冷の間になります。

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