【MBD事例】伝熱工学を利用した電気自動車のバッテリ冷却モデル

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自動車工学
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伝熱工学を用いたバッテリ冷却モデルを作ります。モデル作成の前に、熱の伝わり方に関する学問である伝熱工学の概要を説明します。伝熱工学では熱の伝わり方には3種類あり、①熱伝導②熱伝達③輻射熱に分類されます。その次に、伝熱工学を利用した簡易バッテリ冷却モデルを作成し、パラメータを変更しながらシミュレーション結果を考察していきます。

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伝熱工学は熱伝導、熱伝達、輻射熱の3種類

熱の伝わり方を研究する学問を伝熱工学と言います。自動車開発では、この伝熱工学は非常に重要であり、頻出する理論です。自動車開発では熱(サーマル)マネジメント設計と言って、各部品の温度が適切な温度域にコントロールするために冷却または加熱をしています。そのときに、伝熱工学の理論を用いて机上でシミュレーションする機会が多くあります。

以下で、①熱伝導②熱伝達③輻射熱の3つの伝熱について解説します。

熱伝導

熱伝導とは、固体ー固体間の伝熱現象のことを指します。例えば、鉄の棒の端を火で加熱すると棒に沿って熱が伝わり、やがて反対側の端も熱くなってきますよね。これは鉄の棒の中で熱伝導が起こっているからです。

物体1と物体2の間の熱伝導量を\(Q_{cond}[\mathrm{W}]\)とすると$$Q_{cond}=\lambda\cdot\frac{S}{L}\cdot(T_1-T_2)$$で計算されます。ここで、\(\lambda[\mathrm{W/K/m}]\)は熱伝導率、\(S[\mathrm{m^2}]\)は伝熱面積、\(L[\mathrm{m}]\)は伝熱距離、\(T_{1}-T_{2}[\mathrm{K}]\)は温度差です。

熱伝達

熱伝達とは、固体ー流体間または流体ー流体間の伝熱現象のことを指します。自動車でこの熱伝達を利用している部品は多く存在します。例えば、ラジエータやインタークーラーなどの熱交換器は熱い流体と冷たい流体を熱伝達させるための部品です。身近な現象で言えば、扇風機は熱伝達を利用した家電であり、ファンを回して起こした風(流体)と皮膚(固体)で熱伝達させて冷感を得ています。

物体1と物体2の間の熱伝達量を\(Q_{trans}[\mathrm{W}]\)とすると$$Q_{trans}=h\cdot A\cdot(T_1-T_2)$$で計算されます。ここで、\(h[\mathrm{W/K/m^2}]\)は熱伝導率、\(A[\mathrm{m^2}]\)は伝熱面積、\(T_{1}-T_{2}[\mathrm{K}]\)は温度差です。

輻射熱

輻射熱とは、高温表面から低温表面に向かって、その間の物質を介さずに電磁波の形で伝わる熱のことです。空気を介して伝わる熱ではないので、真空中でも輻射熱は伝わります。例えば、太陽の日光を浴びると暖かく感じたり、焚き火に当たると暖かく感じたりするのは輻射熱のためです。

輻射熱を\(Q_{rad}[\mathrm{W}]\)とすると、$$Q_{rad}=\varepsilon\cdot\sigma\cdot A\cdot ({T_1}^4-{T_2}^4)$$ここで、\(\varepsilon[-]\)は放射率、\(\sigma[\mathrm{W/K^4/m^2}]\)はステファンボルツマン定数、\(A[\mathrm{m^2}]\)は受熱面積、\(T_1-T_2[\mathrm{K}]\)は温度差です。放射率とは0〜1までの値であり、白い色の物体ほど0に近く、黒い色の物体ほど1に近くなります。

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伝熱工学を用いたバッテリ冷却モデルを作成

ここからは上記で説明した3つの理論を取り入れたバッテリ冷却モデルを作ります。電気自動車EVでは大容量のバッテリを搭載していますが、充放電による電流によって発熱をします。バッテリの温度が高くなり過ぎると本来の性能が出せなくなってしまうため、適切な温度に冷却する必要があるのです。

図1:バッテリ冷却モデルの概要

図1は、3つの伝熱を考慮したバッテリ冷却モデルの概要を示しています。電気自動車EVバッテリを冷却水を用いて冷却するというモデルを作りました。バッテリは上部と下部の2つの要素に分割していて、その間は熱伝導(固体ー固体間)します。バッテリ下部は冷却水と接していて、熱伝達(固体ー流体間)をしています。さらに、バッテリ上部には輻射熱が加えられているとします。

簡単のために、パラメータは以下のようにシンプルな値に設定します。熱伝導の伝熱面積\(S[\mathrm{m^2}]\)は\(1\)、伝熱距離\(L[\mathrm{m}]\)は\(1\)、熱伝達の伝熱面積\(A[\mathrm{m^2}]\)は\(1\)、輻射熱\(Q_{rad}[\mathrm{W}]\)は\(100\)、バッテリの初期温度は\(30[\mathrm{℃}]\)、冷却水の温度は常に\(0[℃]\)とします。

バッテリの上部温度\(T_{top}\)と下部温度\(T_{bot}\)は以下の式で計算します。$$T_{top}=\int \frac{Q_{top}}{C_{top}}dt+T_{ini}$$$$T_{bot}=\int \frac{Q_{bot}}{C_{bot}}dt+T_{ini}$$ここで、$$Q_{top}=Q_{rad}-Q_{cond}$$$$Q_{bot}=Q_{cond}-Q_{trans}$$となります。また、バッテリの熱容量\(C_{top}[\mathrm{J/K}]\)と\(C_{bot}[\mathrm{J/K}]\)は簡単のため\(100[\mathrm{J/K}]\)としました。

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作ったモデルをシミュレーションして結果を考察

図2:λ=10, h=10のときのバッテリ温度
図3:λ=10, h=10のときの熱量

図2、図3は、熱伝導率\(\lambda[\mathrm{W/K/m}]=10\)、熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]=10\)のシミュレーション結果です。次に、熱伝導率\(\lambda[\mathrm{W/K/m}]=50\)、熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]=10\)でシミュレーションをします。

図4:λ=50, h=10のときのバッテリ温度
図5:λ=50, h=10のときの熱量

図4、図5から、バッテリ上部と下部の熱伝導率を上げることによって、上部と下部の温度が接近していることがわかります。次は、熱伝導率\(\lambda[\mathrm{W/K/m}]=10\)、熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]=50\)でシミュレーションをします。

図6:λ=10, h=50のときのバッテリ温度
図7:λ=10, h=50のときの熱量

図6、図7から、バッテリ下部と冷却水との熱伝達率を上げたので、バッテリ下部は冷却水の温度に引っ張られて、より冷えるようになりました。しかし、バッテリ上部と下部の間の熱伝導は\(10\)のままなので、上部はあまり冷えていません。最後に、熱伝導率\(\lambda[\mathrm{W/K/m}]=50\)、熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]=50\)でシミュレーションをします。

図8:λ=50, h=50のときのバッテリ温度
図9:λ=50, h=50のときの熱量

図8、図9のように、熱伝導、熱伝達ともに\(50\)にすると、バッテリ上部、下部ともに冷却水に熱量が流れるようになり、どちらもしっかり冷却できることが確認できます。

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