【自動車工学】熱力学・流体力学で学ぶコンプレッサの仕組み

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これまでは空調の原理である冷凍サイクルとヒートポンプサイクルの基礎的な原理や空調技術で必須のモリエル線図の見方というサイクル全体の理論について解説してきました。

ここからは、サイクルを構成している主要部品の理論を解説します。最初はコンプレッサ(圧縮機)からスタートします。初心者の方にとってコンプレッサの理論は複雑なので、今回は簡単のために断熱圧縮を仮定して説明します。

コンプレッサは固定容量型と可変容量型に分けられますが、簡単のためまず固定容量型コンプレッサの理論について解説します。

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コンプレッサが担う2つの重要な役割

図1:モリエル線図と各部品の対応

コンプレッサの役割は、エバポレータで気化した冷媒を圧縮し、高圧・高温にした冷媒を吐出することによって、コンデンサで凝縮できる状態にすることです。役割を分割すると、①冷媒の圧縮と②冷媒の吐出の2つに分かれるので、以下ではそれぞれの機能に分割して説明していこうと思います。

1つ目の役割:冷媒を圧縮して高圧・高温にする

まず1つ目の役割である、冷媒の圧縮について熱力学の視点から説明しようと思います。なるべく複雑な数式の解説はせずにイメージを掴んでもらうことに重点を置いて説明します。簡単のために、コンプレッサは断熱圧縮するという仮定を置きましょう。

断熱圧縮の式からモデル化

ポアソンの公式から$$pV^\gamma=\mathrm{Const}$$という関係が成り立ちます。ここで、\(\gamma\)は比熱比で、\(\gamma=C_p/C_V\)で定義されます。\(C_p\)は定圧比熱、\(C_V\)は定積比熱です。

次に、理想気体の状態方程式$$pV=nRT$$の両辺に\(V^{\gamma -1}\)を掛けると$$pV^\gamma=nRTV^{\gamma -1}=\mathrm{Const}$$つまり、$$TV^{\gamma -1}=\mathrm{Const}$$の関係も成り立ちます。したがって、コンプレッサが断熱圧縮をすると仮定すれば、圧縮後の圧力と温度は上記の式から決まります。

• \(pV^\gamma=\mathrm{Const}\)
• \(TV^{\gamma -1}=\mathrm{Const}\)

もう少し具体的に例を使って説明しましょう。

図2:ピストンの概念図

図2はピストンの簡単な図を表しています。ピストンを押して圧力\(p_1\)、体積\(V_1\)、温度\(T_1\)が圧力\(p_2\)、体積\(V_2\)、温度\(T_2\)に変化したとします。この変化を先ほどの式に当てはめてみます。$$p_1V_1^\gamma=p_2V_2^\gamma$$$$T_1V_1^{\gamma -1}=T_2V_2^{\gamma -1}$$これを式変形すると$$p_2=p_1\varepsilon^\gamma$$$$T_2=T_1\varepsilon^{\gamma-1}$$ここで\(\varepsilon\)は圧縮比と呼び、\(\varepsilon=\frac{V_1}{V_2}\)で定義されます。この式からわかることは、圧縮後の冷媒の圧力と温度は圧縮開始時の圧力\(p_1\)、温度\(T_1\)と圧縮比と比熱比\(\gamma\)だけで決まるということです。比熱比は冷媒の1種であるR134aであれば\(\gamma=1.12\)となります。

可変容量型コンプレッサでは、Duty比を変化させることによりピストンのストローク量を変化させています。ストローク量が短くなることと圧縮比が小さくなることは同値なので、Duty比が下がると吐出圧力・温度は低下します。

圧縮比と比熱比を変えてシミュレーション

断熱圧縮モデルを作ってシミュレーションしてみましょう。前提条件は\(p_1=0.1[\mathrm{MPa}]\)、\(T_1=20[\mathrm{degC}]\)とします。

図3:圧縮後の圧力シミュレーション
図4:圧縮後の温度シミュレーション

図3、図4は断熱圧縮を仮定したときの圧縮後の圧力と温度のシミュレーション結果になります。この結果を考察すると、比熱比の大きな流体を高い圧縮比で圧縮するほど圧縮後の圧力・温度は高くなります。R134aの比熱比は1.12である一方、空気の比熱比は1.4となります。つまり、同じ圧縮比でも冷媒であるR134aを圧縮するのと空気を圧縮するので、圧縮後の圧力・温度はまったく異なります

2つ目の役割:冷凍サイクル中に冷媒を循環させる

冷媒を吐出することもコンプレッサの重要な機能になります。ここからはコンプレッサから吐出される冷媒量がどのような計算式で決まっているのかを説明していきたいと思います。まず、コンデンサから吐き出される吐出流量\(G[\mathrm{kg/s}]\)は以下の式で計算できます。$$G=V_c\cdot\frac{N_c}{60}\cdot\eta_v\cdot\rho$$ここで、\(V_c[\mathrm{m^3}]\)はコンプレッサ排気量、\(N_c[\mathrm{rpm}]\)はコンプレッサ回転数、\(\eta_v[\mathrm{-}]\)は体積効率、\(\rho[\mathrm{kg/m^3}]\)は冷媒密度です。体積効率はコンプレッサの冷媒が圧縮中にどのくらい漏れたかを表しています。例えば、排気量100[cc]のコンプレッサが1回圧縮して100[cc]吐出すれば体積効率は100[%]ですが、50[cc]が圧縮中に漏れて50[cc]しか吐出されなければ体積効率は50[%]となります。

また、冷媒密度は冷媒の圧力と温度によって決定されます。冷媒密度は高圧・低温条件で最も高くなり、低圧・高温条件で最も低くなります

まとめ

今回は、断熱圧縮を仮定してコンプレッサの2つの機能について解説をしてきました。1つ目の機能は冷媒を圧縮するという機能です。圧縮後の圧力と温度は圧縮開始時の圧力・温度、圧縮比、比熱比で決定されます。2つ目の機能は冷媒を吐出するという機能です。吐出流量は排気量、回転数、体積効率、密度で決定されます。

断熱圧縮を仮定して解説しましたが、実際のコンプレッサでは様々な損失があり断熱圧縮とは異なる熱力学的変化をします。

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