【自動車工学】空調システムのコンデンサ理論

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Condenser fan air through the use of old rust.
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コンデンサはコンプレッサで圧縮して高温になった気体の冷媒を液体に凝縮させる機能を持つ部品です。コンデンサの構造と放熱量の計算方法について解説します。

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コンデンサの構造

まずはコンデンサの構造について簡単に紹介します。

一般的なコンデンサはU字に折り返している配管にフィンがろう付けされた構造を取っています。コンプレッサで圧縮された高温のガス冷媒はU字のパイプ内を通ります。そのハイプと直交するようにフィンの間を空気が通過することによって冷媒と空気が熱交換されます。フィンが取り付けられている理由は熱交換面積をより大きくするためです。以前の記事で、熱領域の基本法則について解説しています。熱交換量\(Q[\mathrm{W}]\)は$$Q=G\cdot(T_1-T_2)$$で定義されます。\(G[\mathrm{W/K}]\)は熱伝達率、\(T_1[\mathrm{K}]\)、\(T_2[\mathrm{K}]\)は熱交換する2つの物体の温度です。

今回はこの式を少し変形してみます。$$Q=g\cdot A\cdot(T_1-T_2)$$ここで、熱伝達率\(G[\mathrm{W/K}]\)を\(g[\mathrm{W/K/m^2}]\)に再定義し直すと、$$G=g\cdot A$$と書けます。\(A[\mathrm{m^2}]\)は熱交換面積であり、熱交換器にフィンが取り付けられているのはこの\(A\)の値を大きくするためです。

次に、熱伝達率\(g\)についてです。\(g\)は一般的にU字配管を通過する冷媒の流量とフィンの間を通過する空気の風速の2変数関数として決まります

自動車では走行中は走行風がコンデンサにあたるので\(g\)が大きな値になりますが、停車中は風が止まってしまうため、コンデンサで冷媒が凝縮できなくなる恐れがあります。そこで、コンデンサにはファンがついていて風速が不足するときはファンを回して\(g\)の値が大きくなるようにしています。

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凝縮の理論

ここからは簡単な数式だけを使って、コンデンサがどのように冷媒を凝縮させているかを理論的に説明していきます。

コンデンサ の理論で重要なのは冷媒が空気に放出する熱量と空気が冷媒から受け取る熱量は保存されるということです。冷媒がコンデンサ内で行う仕事率\(Q_{cond}\)は$$Q_{cond}=G\cdot (h_b-h_c)$$で定義されることは以前お伝えしました。

空気が冷媒から受け取る仕事率\(Q_{air}\)は$$Q_{air}=g\cdot A\cdot(T_{ref}-T_{air})$$となります。エネルギー保存則から$$Q_{cond}=Q_{air}$$が成り立つので、$$G\cdot(h_b-h_c)=g\cdot A\cdot(T_{ref}-T_{air})$$$$h_c=h_b-\frac{g\cdot A\cdot(T_{ref}-T_{air})}{G}$$と書けます。

つまり、右辺の第2項の値が大きくなればなるほど\(h_c\)の値は小さくなっていきます。つまり、より多くの熱を空気に放熱できるようになるため、自分自身の比エンタルピー\(h_c\)が小さくなるのです。逆に、熱伝達率\(g\)や熱交換面積\(A\)が小さかったり、温度差\(T_{ref}-T_{air}\)が小さいとき(例えば、夏場の外気温度が高いシーンなど)はコンデンサの放熱量が減少し、\(h_c\)の値は大きくなってしまいます。そうなると\(h_c\)は飽和液線よりも右側になり、完全に液化せずに2相の状態のままコンデンサ から出てきてしまいます。

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まとめ

今回は冷凍サイクルで冷媒を凝縮させる機能をもつコンデンサの理論について解説しました。以下で本記事の要旨をまとめます。

• コンデンサは冷媒と空気を熱交換させて、冷媒を凝縮させるための部品
• 熱交換面積を増加させるためにコンデンサ には無数のフィンがろう付けされている
• 熱伝達率は冷媒流量と空気風速の2変数関数で決定される
• 停車中でも熱交換量を確保するためにファンが回転し、熱伝達率を上げる
• 冷媒→空気、空気→冷媒の熱交換量は保存される

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