【自動車工学】冷却回路の仕組みを解説!ラジエータ/ウォータポンプ/サーモスタットの役割も説明!

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冷却回路の仕組みを知りたい

今回は、冷却回路の仕組みについて解説し、最後に実際に作ったモデルをシミュレーションをして結果を考察します。

冷却回路は電気自動車にとって非常に重要な役割を果たしています。電気自動車のバッテリは熱に弱く、高温に曝されてしまうと劣化し、寿命を縮めてしまうのです。

そこで、冷却回路を用いてバッテリを冷却することによって、バッテリの劣化を防ぐ必要があるのです。

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冷却回路の構成

まずは、冷却回路とは何かを説明します。冷却回路とは冷却水を循環させて各部品を冷却することによって、オーバーヒートするのを防ぐための回路のことです。

図1:簡易冷却回路の概念図

図1は、今回のプラントモデルで使用するための簡易的な冷却回路図を示しています。冷却回路は、①エンジン②ラジエータ③ウォータポンプ④サーモスタットの4つの部品で構成しました。以下で、それぞれの部品の機能について説明します。

エンジン

エンジンは燃料と酸素を化学反応させて得られた熱エネルギーを運動エネルギーに変換する部品です。しかし、熱領域に限定するとエンジンは単なる発熱体とみなすことができます。エンジンでは膨張行程中に冷却損失と言って、シリンダー内の熱がウォータージャケットを流れる冷却水に逃げる現象が起こります

したがって、エンジン出口の冷却水の温度はエンジン入口の冷却水の温度よりも冷却損失の熱量を受け取るため上昇するのです。

ラジエータ

図2:ラジエータ

図2で示すラジエータは、冷却水の熱量を外気に放熱するための熱交換器になります。熱交換器が放出できる熱量\(Q[\mathrm{W}]\)は熱伝達率\(h[\mathrm{W/K/m^2}]\)と伝熱面積\(A[{m^2}]\)と冷却水温度\(T_{llc}[K]\)と外気温度\(T_{amb}[K]\)との温度差\(T_{llc}-T_{amb}\)から決まります。$$Q=h\cdot A\cdot(T_{llc}-T_{amb})$$

もし、ラジエータがなければ冷却回路は熱を放熱することができなくなるので、エンジンからの熱量を受けて水温は上がり続けてしまいます。そうなれば、エンジンはオーバーヒートを起こして故障してしまうので、ラジエータで外気に熱を放熱することによって冷却水の水温を一定に保とうとしているのです。

ウォータポンプ

ウォータポンプは冷却回路内の冷却水を循環させる機能を持っています。なぜ、冷却水を循環させるのかというと、冷却水の流量が大きい方が熱伝達率\(h\)が高くなるからです。上記のラジエータは冷却水の流れが止まっている状態では、ほとんど外気に放熱できません。ラジエータ内を冷却水が循環して初めて多くの熱を放熱できるのです。

サーモスタット

サーモスタットとは、冷却回路の経路切り替える機能を持った部品です。基本的に、冷却回路にはラジエータを通過する経路とそれをバイパスする経路があり、その2つの経路に切り替えにサーモスタットが用いられます。

サーモスタットは冷却水の温度によって機械的に回路のパスを切り替える機構になっています。冷却水の温度が低いときはラジエータをバイパスさせて、温度が上がってくると徐々にラジエータに冷却水が流れ始めて放熱が始まります

バイパスさせる理由は、冷却水を早く温めるためです。冷却水の温度が低いとオイルの粘性が高くなり、摩擦抵抗が増加して燃費性能が悪化してしまうからです。また、エンジン自動車の場合は冷却水は暖房にも利用しているので、車室内を早く暖房するためにも冷却回路をバイパスさせて早期に水温を暖機する必要があります。

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冷却回路モデルの作成

次に、冷却回路モデルの作成方法について解説をします。冷却回路では、熱エネルギーは冷却水の流れに伴って搬送されていきます。その搬送される熱エネルギーの収支に応じて各部の温度が計算できます。この搬送という考え方は、これまでの伝熱工学にはありませんでした。伝熱工学では、温度差があれば高い方から低い方へ熱量が移動しました。一方、搬送は冷却水の流れに乗って、強制的にエネルギーが移動しているのです。

図3:冷却回路の熱モデル

図3は、簡易的な冷却回路モデルを示しています。冷却水が左から右にウォータジャケットの中を流れています。ウォータジャケットを通過するときに、エンジンから発熱量\(Q_{Heat}[\mathrm{W}]\)を受け取るモデルです。ここで、冷却水の体積流量を\(q[\mathrm{L/min}]\)、冷却水比熱を\(c[\mathrm{J/kg/K}]\)、冷媒密度を\(\rho[\mathrm{kg/m^3}]\)とします。

搬送によってウォータジャケットに流入する仕事率\(Q_{in}\)は$$Q_{in}=q\cdot c\cdot\rho\cdot\frac{1}{1000\cdot 60}\cdot T_{in}$$で計算できます。ここで、\(q\cdot c\cdot\rho\cdot\frac{1}{1000\cdot 60}\)は熱容量流量と呼ばれる物理量であり、単位は\([\mathrm{W/K}]\)となります。\(\frac{1}{1000\cdot 60}\)は\([\mathrm{L/min}]\)を\([\mathrm{m^3/s}]\)に単位変換するための係数です。

この熱容量流量は熱伝達と同じ単位\([\mathrm{W/K}]\)ですが、意味はまったく異なるので間違えないようにしてください。熱伝達率は温度差1\([\mathrm{K}]\)当たり何\([\mathrm{W}]\)熱が移動するかという意味です。一方、熱容量流量は温度1\([\mathrm{K}]\)の流体が何\([\mathrm{W}]\)のエネルギーを搬送するかという意味であり、温度差ではありません

また、搬送によってウォータジャケットから流出する仕事率\(Q_{out}\)も同様に$$Q_{out}=q\cdot c\cdot\rho\cdot\frac{1}{1000\cdot 60}\cdot T_{out}$$で計算できます。したがって、ウォータジャケット内の冷却水の温度\(T_{wj}\)は$$T_{wj}=\int\frac{Q_{in}-Q_{out}+Q_{heat}}{C_{wj}}dt+T_{ini}$$ここで、\(C_{wj}[\mathrm{J/K}]\)はウォータジャケット内の冷却水の熱容量であり、分解すると$$C_{wj}[\mathrm{J/K}]=c[\mathrm{J/kg/K}]\cdot \rho[\mathrm{kg/m^3}]\cdot V[\mathrm{m^3}]$$となります。\(V\)はウォータジャケットの体積です。

上記のように、冷却回路の熱モデルでは搬送に伴って流入・流出する仕事率と外部から加えられる仕事量の2つを考慮する必要があります

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