EVのバッテリ劣化対策には冷却が重要!3つの冷却方式(空冷・水冷・冷媒)の仕組みを解説!

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電気自動車の課題はバッテリの経年劣化

各自動車メーカーはバッテリ寿命を延ばす対策をしている

電気自動車の最大の課題は、搭載しているバッテリの経年劣化です。

この経年劣化により、電気自動車の航続距離は年々短くなってしまいます。

さらに、バッテリが劣化することによって下取り価格も低下するという負のスパイラルが起こってしまいます。

この問題に対して、各自動車メーカーは様々な対策をしていますが、バッテリの経年劣化を防ぐ上で最も重要な対策がバッテリの温度を適切な温度にコントロールすることです。

そこで、各メーカーはバッテリを冷却することにより適切な温度をキープさせているのです。

今回は、空気冷却・水冷却・冷媒冷却の3つの冷却方式のメリット・デメリットについて解説していきます!

この記事を読んで得られること

この記事を読むことによって、上記3つの冷却方式の特徴を理解することができます。

また、自分が電気自動車の購入を検討する際の参考にすることができます!

現役自動車開発エンジニアの視点で解説します

私は現役の自動車開発エンジニアであり、過去に電気自動車の開発にも携わった経験があります。

今回はエンジニアの視点で、各バッテリ冷却方式の違いをわかりやすく説明していきます。

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バッテリの冷却方式は空冷・水冷・冷媒の3種類に分かれる

バッテリの冷却方式には、①空気冷却(空冷)、②水冷却(水冷)、③冷媒冷却の3種類が存在します。

以下で、それぞれの冷却方式の詳細について説明していきます。

空気冷却(空冷)は最も手軽に冷却できるが、冷却能力が劣る

メリット:部品点数が少なく最も低コストで冷却が可能

空気冷却は最も低コストで冷却できる方式です。

空気冷却とは、簡単に説明するとファンで発生させた風をバッテリに当てることで冷却することです。

必要な部品も冷却ファンだけであり非常なシンプルなシステムであるため、コスト面でも優れています。そのため、主に低価格帯の電気自動車で採用されやすい冷却方式になります。

日産の代表的な電気自動車モデルである「リーフ」は初代からこの空冷方式を採用してバッテリを冷却しています

デメリット:他の2つに比べると圧倒的に冷却能力が劣る

空気冷却の最大のデメリットは冷却能力が水冷却や冷媒冷却に比べて圧倒的に劣ることです。

冷却能力は、その流体の熱容量(熱をどれだけ吸収できるか)で決まってきます。その熱容量は流体の密度、比熱、体積で決まります。

空気の密度は水や冷却に比べると非常に小さいので、熱容量が小さくなりがちです。そのため、冷却性能が上がりづらいという特徴があります。

水冷却はコストと冷却能力をバランスよく両立

メリット:コストと冷却能力のバランスがいい

水冷却は冷却水(主に、エチレングリコール )を用いて物体を冷却する方法です。

冷却水は液体であるため、空気よりずっと密度が高く熱容量が大きくなります。そのため、空気冷却よりもずっと大きな冷却能力を得ることができます

水冷却に必要な部品は主に、ウォーターポンプ(冷却水を循環)、ラジエータ(冷却水の熱を外気に放熱)、サーモスタット(ラジエーターへの流路をバイパスさせて、暖機のときに早く昇温)の3つの部品が必要となります。

デメリット:大出力バッテリに対しては冷却能力が不足しやすい

小型のバッテリであれば十分な冷却能力が得られる水冷却方式ですが、大出力のバッテリに対しては冷却能力が不足しやすくなります。

水冷却では、バッテリの冷却中に冷却水の温度がどんどん上昇してしまうという特徴があります。

そのため、バッテリの入口に入る冷却水は冷たいのに、その後バッテリの熱を吸熱することにより、水温が上がってきて、バッテリの出口付近ではもう熱くなっているということが起こってしまいます。

さらに、水冷却は物理的に外気温度より低い温度には下げられません。これは伝熱工学の理論上決まっています。熱は自分と相手の温度差に比例した量が高温側から低温側に向かって移動します。つまり、冷却水と外気の温度が等しくなる(温度差が0になる)と熱の移動がなくなってしまうのです。

したがって、真夏のような外が暑い状況では水冷却の能力も必然的に落ちてしまうのです。

冷媒冷却はコストが高いが、冷却能力は抜群

メリット:最も大きな冷却能力が出せる

冷媒冷却の最大のメリットは、最も大きな冷却能力が得られることです。

冷媒冷却とは、エアコンの原理を利用した冷却方式のことであり、冷媒が液体から気体に状態変化するときに奪う気化熱を利用した冷却です。

水冷却と似ているかもしれませんが、冷媒冷却と水冷却の大きな違いは2つあります。

1つ目は、冷媒冷却は外気温度よりも低い温度まで冷媒温度を下げることが可能ということです。それにより、外気温度が高い環境においても高い冷却能力を維持することができます。

2つ目は、液体から気体への状態変化中は温度が常に一定になるということです。水冷却では、冷却水の温度がどんどん上がっていくと説明しましたが、冷媒冷却では状態変化中であれば常に温度が一定に保たれます。そのため、バッテリを入口か出口まで均一に冷却することが可能なのです。

デメリット:コストが非常が高くなる

冷媒冷却のデメリットはシステムを構成するためのコストが非常に高いということです。

エアコンと同じ原理で冷却するので、必要な部品はコンプレッサ(圧縮)、コンデンサ(放熱)、エキスパンションバルブ(減圧)、エバポレータ(吸熱)という4つの部品が最低でも必要になります。

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小型バッテリには空冷、大型バッテリには冷媒冷却のように使い分けが重要

今回は、空気冷却・水冷却・冷媒冷却という3つの冷却方式についてメリット・デメリットを解説してきました。

それぞれの方式は一長一短あり、用途に応じた使い分けが重要です。発熱量の少ない小型バッテリであれば空冷で充分ですし、大型バッテリの場合は発熱量も熱容量も大きいので、冷媒冷却が必要になります。

これらをまとめると以下のようになります。

空気冷却はとにかく低コストで冷却できる

  • 部品点数が少なく最も低コストで冷却が可能
  • 水冷却・冷媒冷却に比べると圧倒的に冷却能力が劣る

水冷却は外気温度までしか冷却できない

  • コストと冷却能力のバランスがいい
  • 大出力バッテリに対しては冷却能力が不足しやすい
  • 外気温度より低い温度には冷却できない

冷媒冷却はコストも増加がボトルネックになりがち

  • 最も大きな冷却能力が出せる
  • 外気温度よりも低い温度で冷却できる
  • コストが非常が高くなる
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