サクラ(日産自動車)とeKクロスEV(三菱自動車)から軽EVが発売
国内初の軽自動車の電気自動車
日産自動車と三菱自動車が共同開発した、軽EVが発売されました。
日産自動車からは「サクラ」、三菱自動車からは「eKクロスEV」という名前で発売されています。
価格はどちらも最低230万円台からとなっていますが、国と地方自治体の補助金対象となっているので実質100万円前半で購入できる地域もあるようです。
電気自動車が実質100万円前半で乗れるとなれば、これまでエンジン車の軽自動車に乗っていたユーザーからの乗り換えも非常に期待できるのではないでしょうか。
軽EVのメリット・デメリットを把握したい
従来の軽自動車と同等レベルの価格で電気自動車に乗れるとなったとしても、やはりいきなりエンジン車から電気自動車に乗り換えるというのは少し不安を感じますよね?
そこで、今回は軽EVのメリット・デメリットを現役の自動車開発エンジニアの視点で解説をしていきます。
私は現役の自動車開発エンジニアです
私は社会人になってからずっと自動車開発に携わっています。主な開発製品は、電気自動車、燃料電池自動車、エンジン開発です。
さらに、機械学習やディープラーニングを使ったAI技術の開発の経験もあります。
以下では、エンジニア的視点から軽EVのメリット・デメリットの詳細を説明していきます。
軽EVのメリット
静粛性が高く、乗り心地がいい
軽EVの代表的なメリットは、高い静粛性からエンジン車よりも乗り心地がいいということです。
従来のエンジン軽自動車はエンジン音が車室内に入り込みやすく、静粛性が低いです。
これは軽自動車はコストの面から遮音性が低く、さらに660ccの3気筒エンジンではパワー不足から、どうしてもエンジン回転数が上がりやすく騒音も大きくなりがちだからです。
しかし、電気自動車になればエンジンがモーターに置き換わるので、遮音性の低い軽自動車でも高い静粛性が期待できます。また、振動も少なくなるので車酔いにくく、乗員に優しいドライブができます。
電気代<ガソリン代で、ランニングコストが抑えられる
電気代<ガソリン代によって、日々のランニングコストが抑えられることも軽EVに乗り換えるメリットになります。
現在は、エネルギー価格の高騰からガソリン価格も高止まりしています。電気自動車に乗り換えることによって、1ヶ月の燃料代(電気代)はおおよそ半分に減らすことができます。
車両価格は従来の軽自動車よりも少し高めですが、ランニングコストの安さから長い期間乗り続けることによってトータルコストの逆転が期待できます。
軽EVのデメリット
用途が近場の使用に限定される
用途が近場の使用に限定されてしまうことは、軽EVの大きなデメリットです。
「サクラ」と「eKクロスEV」のバッテリ容量は20kWhであり、これはリーフの1/2〜1/3しかありません。航続距離のカタログスペックは180kmとなっていますが、実際の走行ではカタログ通りのスペックを出すことは難しく、遠出の旅行に使うのは不安が残ります。
詳細は後述しますが、エアコンで冷暖房をしながら走行すると、さらに高速距離は短くなってしまいます。
したがって、軽EVを購入を検討されている方は、子どもの学校や習い事の送り迎えやスーパーなどへの買い物といった近場の使用だけに割り切れるかどうかを念頭に置く必要があります。
エアコン使用時に航続距離がさらに短くなる
カタログスペックは満充電で180km
カタログスペックの180kmはもちろんエアコンを使用していない条件での数値なので、冷房使用するとおおよそ20%程度は航続距離が落ちてしまいます。
20%低下した場合、航続距離は144kmとなってしまいます。暖房は冷房よりもバッテリに負荷が掛かり、最大50%も航続距離が低下します。すると、満充電しても90kkmしか走れない計算になります。これでは、遠出は難しいのではないでしょうか?
乗員が2人や3人と増えたり、荷物をたくさん載せたりすると、それだけ車両重量が増加するので、航続距離はさらに下がっていきます。
バッテリの経年劣化も気になる
バッテリは年々劣化していき、新車のときと同じ航続距離を保つことはできなくなります。
バッテリの劣化のスピードは車種ごとに異なるので、具体的な数値は不明ですが、年々航続距離が落ちていくことは確実です。
新車のときの航続距離が180kmしかないので、そこに劣化+エアコン+乗員+荷物の要素が加わると、そこからかなり目減りすることが想定されるのではないでしょうか。
年月が経った後、満充電しても少しの距離しか走れなくなるというリスクがあることを頭に入れておく必要がありますね。
バッテリ冷却と空調が共用なため、空調能力不足になる可能性がある
「サクラ」と「eKクロスEV」のバッテリ冷却は冷媒冷却を採用しています。
エアコンの冷媒回路とバッテリ冷却回路を共用にして、冷媒をバッテリにも流しているのでしょう。
エアコンとバッテリで同じ冷媒回路を使うということはエアコンの能力が不足する懸念があります。なぜなら、バッテリ冷却に多くの冷媒が流れれば、当然エアコンの使える冷媒量は少なくなるからです。
エアコンの能力不足が懸念されるのは、バッテリ冷却とエアコンが同時に使われるケースです。エアコンはユーザーが自分でスイッチでON/OFFするので操作できますが、バッテリ冷却はユーザー側で操作することはできません。
したがって、エアコンを付けていて途中でバッテリ冷却が始まると、いきなりエアコンの効きが悪くなる可能性があります。
まとめ
今回は、国内初の軽EVが日産自動車と三菱自動車から発売になってので、軽EVのメリット・デメリットをエンジニア視点で解説しました。
- 高い静粛性からエンジン車よりも乗り心地がいい
- 電気代<ガソリン代で、ランニングコストが抑えられる
- 用途が近場の使用に限定される
- エアコンの使用で、少ない航続距離がさらに短くなる
- バッテリ冷却と空調が共用なため、空調能力不足になる可能性がある
個人的には、軽EVを購入する際の決め手となるのは、用途が近場の使用に限定されるデメリットを許容できるかどうかだと感じています。
軽EVで普段使いから遠出の旅行までをカバーするのは正直厳しいと思います。近場の使用に割り切れる方やセカンドカーとして使用したい方にとっては、非常に魅力的な車になると思います!
コメント
自動車エンジニアと言いながら、技術面でかなり臆測記事が多いですね。
取材が足りません。
バッテリーの劣化レベルも、一般人と同じ程度の理解しかないのでは?
8年16万キロの保証がどうして実現するのか、考えたら分かると思うが、スマホやパソコンのリチウムイオン電池と同じ土俵にしか読み取れない。
こういう自動車エンジニアが、「自動車エンジニアだから私の言うことは経験豊かな正しい見解」、といつまでも言ってるから日本のモビリティ革命は進まない。現役のガラパエンジニアと名乗るのがよろしいのでは?こういうつまらないことを書く暇があったら、この軽電気自動車が好調なスタートをしている一方で、bz4xや、ソルテラが製造停止になってる現実に恐怖したほうがよろしいでしょう。
エアコンについて、バッテリー空調と共用しているから普通のより効かないかも?
と記載されていますが、軽自動車の660ccの非力なエンジン(特にアイドリング時)でエアコンのコンプレッサーを回すよりも、空調用のモーター(専用)で回している軽EVの方が効きが良いのでは?