燃料電池の仕組みと燃料電池自動車のメリット・デメリット3選をそれぞれ解説!

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燃料電池自動車の特徴を解説

燃料電池自動車のメリット・デメリットを知りたい

カーボンニュートラルな社会の実現に向けて、自動車業界では電気自動車(EV)や水素自動車(FCV)の開発が進められています。

ヨーロッパやアメリカでは、EVが将来のエコカーの主流にしようとする動きが出てきており、FCVは普及しないのではないか?という声をあります。日本国内でも軽自動車のEVが発売され、EV人気が徐々に高まっていますね。

しかし、大型トラックやバスなどの超長距離を走行する車両にとって、バッテリの電力だけで走るEVではまだまだ航続距離が足りないという課題があります。その点、燃料電池はリチウムイオンバッテリよりもエネルギー密度が高いため、同じ体積であればFCVのほうが航続距離を延ばせる利点があります。

したがって、EVは小型〜中型、FCVは大型〜というような使い分けをすることによって、どちらも社会に共存できると考えられています。

そこで、今回は水素エンジンではなく、燃料電池に焦点を当てて、発電ができる仕組みと燃料電池自動車のメリット・デメリットについて整理をしていきます。

この記事を読んで得られること

この記事を読むことによって、燃料電池の原理と燃料電池自動車におけるメリット・デメリットが理解できるようになります。

燃料電池自動車の購入を検討されている方にとって参考になる内容になっています。

現役の自動車開発エンジニアです

私は現役の自動車エンジニアとして働いています。

燃料電池の開発にも携わったことがあるので、自分の知識からご紹介していきます。

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燃料電池の仕組み

まず、燃料電池がどのようにして発電しているのかを仕組みから説明していきましょう。

水素と酸素の化学反応から電気エネルギーを抽出

燃料電池は水素と酸素が化学反応して、水になるときに電気エネルギーを抽出しています。$$\mathrm{2H_2+O_2\rightarrow 2H_{2}O}$$

では、なぜ化学反応が起こるだけでエネルギーを取り出すことができるのでしょうか?

この理由は、エネルギー保存の法則が関係しています。反応前のエネルギーと反応後エネルギーは保存しているということです。言い換えれば、反応によってエネルギーが生み出されたり、消滅することはありません。

エネルギー保存則から考えると、2つ水素分子と1つの酸素分子のトータルエネルギーよりも2つの水分子のエネルギーのほうがエネルギーが小さいということです。したがって、その差のエネルギー分が電気エネルギーとして取り出せるのです。

ここで言う、エネルギーが大きい・小さいとは分子がどれだけ安定して存在しているかを表しています。水素分子と酸素分子は水分子として存在するほうがより安定して存在することができるので、余ったエネルギーを外に放出していると考えることもできます。

燃料電池の構造

もう少し具体的に言うと、燃料電池のセルはアノード触媒、電解質膜、カソード触媒という3つの部品がサンドイッチのようになった構造をしています(図1)。

図1:燃料電池の概念図

アノード側には水素が供給され、カソード側には空気(酸素)が供給されます。アノードでは酸化反応によって、水素イオンと電子が生成されます。生成された水素イオンは電解質膜の中を透過して、カソード側に拡散していきます。$$アノード:\mathrm{2H_2\rightarrow 2H^{+}+2e^{-}}$$

一方、カソードでは還元反応によって、酸素と水素イオンと電子が反応し、水分子が生成されます。$$カソード:\mathrm{2H^{+}+\frac{1}{2}O_2+2e^{-}\rightarrow 2H_{2}O}$$

電子の流れ=電流なので、アノード側で生成された電子が導線を通ってカソード側に移動することが、言い換えれば電気エネルギーを抽出できているということなのです。

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燃料電池自動車のシステム構成

燃料電池自動車のシステム構成

上の図は、燃料電池自動車のシステム構成を示しています。システム構成は電気自動車と非常に似ています

電気自動車は事前に充電されたバッテリから電気系・走行系・熱系に電力を供給するのに対して、燃料電池自動車は車内では空気と水素で発電しながら各ドメインに電力供給します。

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燃料電池自動車のメリット3選

ここからは、パワートレインが燃料電池である燃料電池自動車のメリット・デメリットについて解説していきます。

最初はメリットからご紹介します。燃料電池自動車は電気自動車と比較されることが多いので、今回も電気自動車に対するメリットという形で書いていきます。

電気自動車(EV)と比較して航続距離が長い

燃料電池自動車が電気自動車に対してアドバンテージがあるのは航続距離の長さです。

燃料電池自動車の特徴は電気自動車に用いられるリチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高い点です。エネルギー密度が高いということは、同じ体積で比較するとより多くのエネルギーを蓄えられるということを意味しているので、航続距離を延ばすことができるのです。

水素の充填がEVのバッテリ充電よりも速い

水素の充填はガソリンの給油と同じ時間で済むため、EVのバッテリ充電のように待ち時間によるストレスが軽減されるというメリットがあります。

ただし、充填するための水素ステーションはEV用の充電スタンドよりもまだまだ数が少ないため、遠出する際には必ず場所の確認が必要ですね。

エンジンよりもエネルギー効率が高い

燃料電池は従来のガソリンエンジンよりもエネルギー効率が高いと言われています。

ガソリンエンジンの場合は、投入したガソリンのエネルギーから実際に取り出せる有効的な仕事はその半分以下になってしまいます。

これはガソリンエンジンには様々な損失(時間損失、冷却損失、ポンプ損失など)があり、それらの損失によってエネルギーロスしているからです。エンジンの複雑な構造に対して、燃料電池の構造は比較的シンプルであるため、損失が少なく投入したエネルギーから効率よく電気エネルギーを取り出せるのです。

現在市販されている燃料電池自動車は気体水素を燃料に用いているため、燃料の密度が低く1回の充填当たりの航続距離はガソリン車よりも短いです。

しかし、将来的に液体水素が燃料として採用されれば、上記のエネルギー効率の高さから燃料電池自動車が一気に普及するポテンシャルを秘めています

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燃料電池自動車のデメリット3選

次に、燃料電池自動車のデメリットについて解説します。

触媒に貴金属である白金(プラチナ)を使用するため高コスト

カチオン(陽イオン)電解質膜は強酸性

燃料電池自動車の普及を妨げているボトルネックは、貴金属である白金触媒を使用することによるコスト高です。

これはカチオン(陽イオン)電解質膜が強い酸性を有しているため、触媒に使用する金属には高い耐食性が求められるからです。白金は耐食性に優れているため、現在触媒の材料として使われています。

しかし、白金は貴金属の1種のため価格が高く、これが車両本体価格を押し上げる原因となっています。

アニオン(陰イオン)電解質膜は白金不要だが耐久性が課題

一方、アニオン(陰イオン)電解質膜はカチオン電解質膜と対照的に陰イオンを透過させる電解質膜です。

これは電解質膜がアルカリ性になるため、触媒に白金を使わずに済み、コストを大きく低減できることが期待されています。

しかし、アニオン電解質膜は劣化が早く耐久性が低いという課題が残っているため、現在が研究開発が進められています。これが普及すれば燃料電池自動車の車両価格も下がることが想定されます。

燃料電池内の電解質膜劣化による発電効率低下

燃料電池も電気自動車と同様に、内部の構造が時間とともに劣化していきます。

特に、電解質膜は高温になると劣化しやすい特性があるため、高負荷条件や高外気条件の運転が続くとセル温度が上がって電解質膜の劣化につながってしまいます。

電解質膜が劣化すると、イオン伝導度が低下するためセルの発電効率が低下してしまいます。

以上のような、劣化を防ぐためにも燃料電池自動車の中にはセルの冷却システムが備わっており、劣化を最小限に食い止める対策が取られています。

0度以下の低温環境下の起動が苦手

燃料電池自動車は0度以下の低温環境の起動が苦手です。

その理由は、カソード側で生成される水が0度以下で凍ってしまうからです。燃料電池自動車は生成される水を常に排水しながら走行していますが、これが凍ってしまうと部品の故障につながったり、上手く水素や酸素が供給できなくなったりと様々な問題が起こってしまいます。

そのため、低温環境下では燃料電池スタックの温度を早期に上昇させて、氷を溶かす工夫が取られていますが、これによって燃料である水素を無駄に消費してしまいます。

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まとめ

今回は、燃料電池の仕組みと燃料電池自動車におけるメリット・デメリットについて解説しました。

結論をまとめると以下のようになります。

  • 電気自動車(EV)と比較して航続距離が長い
  • 水素の充填がEVのバッテリ充電よりも速い
  • エンジンよりもエネルギー効率が高い
  • 触媒に貴金属である白金(プラチナ)を使用するため高コスト
  • 燃料電池内の電解質膜劣化による発電効率低下
  • 0度以下の低温環境下の起動が苦手
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