熱交換器の種類と原理を現役自動車エンジニアがわかりやすく説明!

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自動車工学
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熱交換器の機能

熱交換器で熱を自由に移動させる

熱交換器の目的は、熱を温度の高い方から低い方に移動させて、対象の物質を適切な温度にコントロールすることです。熱交換器と聞くと、物体の冷却だけが目的のように思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、暖機(物体を暖める)するためにも利用されます。

したがって、熱交換器とは用途に合わせて熱を捨てたり渡したりして、その対象の部品が最も高いパフォーマンスが出せるようにしている縁の下の力持ちなのです。

様々な工業製品に使われている

熱交換器は様々な工業製品の中に使われています。例えば、家電製品で熱交換器が使用されている代表と言えば、エアコンや冷蔵庫などがあります。これらは熱交換器を介して、冷媒の冷熱を空気に移動させることによって部屋や庫内の空気を冷やしています。

他には、パソコンやスマートフォンの内部にも熱交換器は使われています。半導体であるCPUやGPUは熱に弱いため、熱交換器を通して余分な熱を外部に捨てることにより、温度コントロールしているのです。

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自動車で使用される熱交換器

その中でも特に、自動車は熱交換器の宝庫です。車内の至るところに熱交換器が使われていて、非常に複雑に熱のやり取りが行われています

エンジン領域

エンジン関係では、吸気温度を下げて酸素密度を高めるための「インタークーラー」や冷却水の熱を外気に捨てて、水温を下げるための「ラジエータ」が有名ですね。他にも、エンジンオイルやATFオイルを冷却するための「オイルクーラー」もあります。

高温の排ガスの熱を回収して、冬場の冷却水の早期昇温につなげるための「排熱回収器」にも熱交換器は使われています。

カーエアコン領域

カーエアコン関係では、冷媒の熱を外気に放熱して気体から液体に凝縮させるための「コンデンサ」、冷媒の気化熱を使用して車室内の空気を冷やすための「エバポレータ」、暖房のときにエンジンで暖められた冷却水と車室内の冷たい空気を熱交換させる「ヒーターコア」などが使用されています。

ちょっとマイナーかもしれませんがコンデンサから出た冷媒とエバポレータから出た冷媒を熱交換させて、より冷房能力を向上させるための「内部熱交換器(IHX)」も熱交換器です。

パワーエレクトロニクス領域

近年では、電気自動車や水素自動車などの電動化車両も増えてきていますが、これらの車両にも熱交換器はたくさん使われています。例えば、直流と交流を変換するためのインバータや電圧を昇圧・降圧するためのDCDCコンバータなどのパワーエレクトロニクス製品にも「ヒートシンク」と呼ばれる熱交換器が備え付けられています。

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熱交換器の種類

ここからは自動車でよく使われる熱交換器の種類とその特徴について解説します。

フィンチューブ式熱交換器

フィンチューブ式熱交換器は、気体と気体や液体と気体の熱交換に用いられます。チューブの内部に液体の流体を流し、そのチューブにろう付けされているフィンに空気(気体)を当てることによって液体と気体を熱交換させます。

自動車では、空冷インタークーラー、水冷インタークーラー、オイルクーラー、ラジエータ、コンデンサ、エバポレータ、ヒーターコアがフィンチューブ式熱交換器に該当します。

フィンチューブ式熱交換器の特徴は、後述するプレート式熱交換器よりも単位面積当たりの熱交換量が少ないという点です。そのため、部品サイズが大きくなりやすく、自動車設計のときにレイアウトで問題になることが多いです。

プレート式熱交換器

プレート式熱交換器は、液体と液体の熱交換器に用いられます。

自動車部品では、水冷コンデンサがプレート式熱交換器に該当します。水冷コンデンサは凝縮して液体となった冷媒と冷却水を熱交換させるための機能部品になります。空冷コンデンサよりも放熱量が多く、より冷媒を凝縮させやすい特徴を持ちます。

プレート式熱交換器の特徴は、大きな熱交換量を出せるためにサイズをコンパクトにできるという点です。

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熱交換の仕組みと計算方法

熱伝達現象を利用している

熱交換器は熱伝達現象を利用して、温度が高い方から低い方に熱を移動させています。熱伝達現象とは、流体と固体または流体と流体の間の熱のやり取りのことを指します。

例えば、ラジエータでは冷却水と空気が熱交換するので、流体と流体の熱伝達になります。一方、ヒートシンクは金属のプレートに風を当てて放熱させるので、こちらは流体と固体の熱伝達となります。

伝熱工学の式を使って熱交換量を計算

ここからは、もう少し厳密な計算方法を説明をしましょう。熱交換器の熱交換量\(Q[\mathrm{W}]\)は以下の物理式で決定されます。$$Q=h\cdot A\cdot(T_h-T_l)$$ここで、\(h[\mathrm{W/K/m^2}]\)は熱伝達係数、\(A[\mathrm{m^2}]\)は伝熱面積、\(T_h[\mathrm{K}]\)は高温側の温度、\(T_l[\mathrm{K}]\)は低温側の温度です。

以上の式からわかることは熱交換量を増やすためには、①熱伝達係数を上げる、②伝熱面積を大きくする、③高温側と低温側の温度差を広げるという3つの対策があります。

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熱交換量を増やすための対策

ここからは、熱交換量\(Q\)を増やすための具体的な対策案について解説していきます。

熱伝達係数を上げる

流体を層流状態から乱流状態に近づける

熱伝達係数を上げるために最も重要なことは、流体を乱流状態にすることです。乱流状態とは流体が渦を形成していたり、乱れた流れになったりしている状態を指します。反対に、流体がきれいに流れているときを層流状態と呼びます。

熱伝達係数は、流体が乱流なのか層流なのかによって大きく値が異なります。乱流になればなるほど熱のやり取りが促進され、熱交換しやすくなるのです。

では、どのようにすれば層流が乱流になるのでしょうか?それは流体の流速を上げることです。乱流の程度は「レイノルズ数」と呼ばれる特徴量によって定義付けされているのですが、このレイノルズ数は流速が上がれば上がるほど大きくなります。

つまり、流速が上がる→レイノルズ数が上がる→乱流度合いが強まる→熱伝達係数が上がるというメカニズムです。

流速を上げるには

では、肝心の流速はどのようにすれば上げられるのでしょうか?これも式を使って説明しましょう。流体の流速\(v[\mathrm{m/s}]\)は以下の式から計算できます。$$v=\frac{\dot{V}}{S}$$ここで、\(\dot{V}[\mathrm{m^{3}/s}]\)は流体の体積流量、\(S[\mathrm{m^2}]\)は通過断面積です。

つまり、流速を上げるためには、①流量を上がる、②通過断面積を小さくするの2つの方法があります。①の流量を上げるためには、ファンやウォーターポンプの回転数や体格を増やすことで実現できます。②の通過断面積を小さくするためには配管径を細くしたり、オリフィスなどの絞り機構を持った部品を追加することで実現できます。

ただし流速が上がると圧力損失も増加

流速を上げることによるデメリットも当然あります。それは熱交換器内を通過する流体の圧力損失が増加してしまうということです。

圧力損失とは、簡単に言えばエネルギーロスです。流体の流速が上がれば上がるほど多くのエネルギーロスが生まれてしまい、その結果として流体の圧力が低下するという現象が起こります

ちなみに、圧力損失は流速の2乗で増加するため、流速を上げすぎると熱伝達係数よりも圧力損失の増加が顕著になります。冷却回路内の圧力損失が増えるということは、それだけウォーターポンプやファンに負荷が掛かることを意味しています。負荷が掛かることによって、同じ流量を出すための動力が増加してしまうのです。

伝熱面積を増やす

コア面積を大きくする

最も簡単にできる方法は熱交換器のコア面積を増やすことです。フィンチューブ式の場合は、高さや幅を大きくすれば、それだけ伝熱面積は増えます。プレート式の場合は、プレートのサイズや枚数を増えやことで、同様に伝熱面積を大きくすることができます。

そのデメリットはサイズが大きくなり、自動車という非常に狭いスペースにレイアウトすることが難しくなると言うことです。自動車の設計は他の部品とスペースの取り合いです。わずか数mmの間に部品同士が干渉しないようにギリギリのレイアウト設計が行われています。

自動車設計において、数cmも熱交換器がサイズが増えるというのはレイアウト設計に非常に大きな影響を与えてしまうのです。したがって、流速を上げたり、以下で記述するようなフィンに工夫を施したりすることによって熱交換量を増やしています。

フィンを工夫する

フィン形状が伝熱面積を増やす

伝熱面積を増やすためにはフィンが非常に重要な役割を果たしています。フィンとは波型形状の金属部品であり、波型形状をしているため伝熱面積を大きくする効果があります。

フィンチューブ式熱交換器にはチューブとチューブの間にアルミ製のフィンがろう付けされていますし、プレート式熱交換器においても「インナーフィン」と呼ばれるフィンをプレートに取り付けて伝熱面積を増やす工夫をしているものもあります。

フィンの放熱特性を決めるパラメータ

フィンの放熱特性を決定するパラメータは、①フィン長さ、②フィン厚み、③フィンピッチなどがあります。長さや厚みは単純のフィンの長さと厚みに対応します。③のフィンピッチとはフィンの形状がどれだけ細かいかという密度を決めています。

このフィンピッチが小さいほど、密にフィンが詰まった熱交換器となり大きな伝熱面積が得られます。

高温側と低温側の温度差を広げる

高温側の流体と低温側の流体の温度差を広げるためには、環境で対策できる対策と流体の流し方で対策できる対策の2パターンに分けられます。

環境で対策できるもの

例えば、家庭用エアコンのコンデンサ(室外機)は環境で対応することができます。コンデンサは、冷媒(高温側)と外気(低温側)を熱交換させる部品です。

環境で対策するためには、コンデンサを直射日光の当たりにくい場所に置くことです。そうすれば、外気温度は低くなり、温度差を大きく取ることができるようになります

流し方で対策できるもの

家庭用エアコンの場合は、室外機に対策を実施することができますが、自動車となるとそうはいきません。そこで、自動車では主に流体の流し方を工夫することで温度差を拡大させています

その工夫とは、高温側の流体と低温側の流体を反対方向に流すということです。これを「対向流熱交換」と呼びます。逆に、同じ方向から流すことを「並行流熱交換」と呼びます。

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