油圧の仕組みから活用例までを体系的に解説!初心者にもわかりやすく説明!

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油圧の活用例

油圧は世の中の製品に非常に幅広く活用されています。その代表的な活用例を以下に示します。

  • 建機(ショベルカー、ブルドーザーなど)
  • 農機(トラクター、コンバインなど)
  • 産業車両(フォークリフト)
  • 自動車(マスターシリンダ、ディスクブレーキ、シフト変速など)
  • 特殊車両(消防車など)
  • 工作機械(送り速度制御など)

以上のように、非常に大きなパワーを必要とする製品に油圧の技術は使われていて、必要不可欠な存在になっています。

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油圧の特徴

次に、油圧の特徴をメリットとデメリットの両面から説明していきましょう。まずは、メリットから説明します。

  • 物体の速度を滑らかに変速させることができる
  • 電気的な制御と組み合わせの相性がいい
  • 物体の遠隔操作ができる
  • 物体の速度・位置制御を正確に行うことができる

次に、デメリットを説明します。

  • 直接動力伝達する場合に比べて、伝達効率が低い
  • 油漏れが発生しやすい
  • 油に引火しやすい
  • 油は温度によって粘性特性が異なるため、油温によって油圧性能が変化する

油圧には大きく以上のような、メリット・デメリットが存在することを覚えておいてください。

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油圧の原理

最初に、油圧とは機械が発生する運動エネルギーを油の流体エネルギーに変換し、その流体エネルギーを制御することにより、狙いの運動を実現させる機能のことを指します。

以下では、さらに掘り下げて油圧がどのような原理で動作しているのかを解説していきます。

パスカルの原理

油圧はパスカルの原理を利用することにより、少ない力を大きな力に変換させています。

パスカルの原理とは、密閉された容器の中で静止している流体に加えられた圧力は、流体のすべてに等しい強さで伝達されるという原理です。

この原理を上手く利用することによって、油圧は大きな力を発生させています。

計算式を使って解説

もう少し具体例を入れながら掘り下げましょう。

図のように、断面積\(A[\mathrm{m^2}]\)が異なる2つのシリンダを配管で接続したシステムを考えてみましょう。配管の中は油圧オイル(水色)で満たされています。

前述のパスカルの原理から、この配管内の圧力はすべての点で等しく\(P[\mathrm{Pa}]\)となります。次に、シリンダ1とシリンダ2それぞれの力\(F[\mathrm{N}]\)と圧力の関係は以下のようになります。$$P=\frac{F_1}{A_1}$$$$P=\frac{F_2}{A_2}$$この2つの式から\(P\)を消去すると$$F_2=\frac{A_2}{A_1}\cdot F_1$$つまり、出力される力\(F_2\)は入力した力\(F_1\)から断面積比\(A_{2}/A_{1}\)倍増幅されるということがわかります。

また、エネルギー保存の法則は成り立つので、$$F_1\cdot h_1=F_2\cdot h_2$$の等式が成り立ちます。式変形すると$$h_2=\frac{A_1}{A_2}\cdot h_1$$となります。

したがって、油圧によって力を増幅させるとその分移動距離が短くなり、エネルギー保存則は成り立っているという仕組みです。

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作動油に求められる性質

油圧装置に適切な作動油の条件

油圧オイルには、①圧力を伝達させる、②油圧回路の潤滑剤となる、③安定して長期間作動できるという3つの役割を持っています。それぞれの役割について適切なオイルの条件があるので、以下でリストにまとめていきます。

圧力を伝達させる

圧力をスムーズに伝達させるために、要求されるオイルの性質を以下にまとめます。

  • 流動性が高い
  • 作動温度の範囲内で粘度の変化が少ない
  • 引火点が高い

油圧回路の潤滑剤となる

潤滑油として機能するために、求められるオイルの性質を以下に記載します。

  • 圧力や温度の条件が変化しても高い潤滑性を確保できる
  • 防錆性が高い
  • 水などの不純物と分離しやすい

安定して長期間作動できる

安定して長期間作動油として機能するために必要なオイル性質は以下です。

  • 酸化しにくく劣化が少ない
  • 化学的に安定している

引火点

油圧オイルは、水のような不燃性の液体ではなく燃える性質を持っています。そのため、万が一事故が起こったときに、油圧回路内のオイルが漏れ出し、それに引火した場合火事を引き起こしてしまう危険性があるため注意が必要です。

したがって、油圧装置のオイルを選定する際には、オイルの引火点が高いものを選ぶことが安全面からも非常に重要です。ここで、引火点とはオイルの燃えやすさを表しており、一般的に高ければ高いほど作動オイルとして適しています。

流動性

作動油の流動性とは、オイルの流れやすさを表す指標です。適切な温度のオイルはさらさらしており、色も透明です。しかし、徐々に冷やして温度が下がっていくと粘性が上がってやがて白く不透明な色に変わっていきます。このときの温度のことを「曇り点」と呼びます。

また、さらに冷却していくと完全に固まってしまいます。このときの温度を「凝固点」と呼び、この凝固点から2.5℃高い温度を「流動点」と呼びます。

粘性

最後に紹介するのはオイルの粘性です。粘性とは、オイルの粘り気を表す性質になっています。この粘性は油圧機器を動かす上で非常に重要なポイントになります。粘性は高すぎても低すぎてもよくありません。

粘性が高すぎる場合は、油圧ポンプの負荷が増加しエネルギー損失が増えてしまいます。また、それによるポンプの故障も起こりやすくなってしまいます。しかし、オイル漏れは起こりにくくなり、さらに潤滑効果が高いため油圧装置の摩耗も防ぐことができます。

一方、粘性が低すぎる場合は、オイル漏れ量が増加してしまいます。オイルポンプ内で圧縮したオイルも粘性が低ければ圧縮中に漏れてしまい、体積効率の低下を招いてしまいます。

以上の解説のように、作動油の粘度は高すぎず低すぎずのバランスの取れた特性を使うことが重要です。

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油圧回路の媒体は水じゃダメなのか?

油圧はパスカルの原理を利用していることは上記で説明しました。パスカルの原理は流体であれば成り立つ原理です。つまり、別にオイルでなくても水を使っても成り立つわけです。

では、なぜオイルではなく水を使わないのか?という疑問が湧いてきます。そこで、以下で水を媒体として使った場合のデメリットを書きます。

  • 潤滑機能が弱く、油圧ポンプや油圧シリンダが痛む
  • 油圧回路内の配管や部品が錆びやすくなる
  • 高温にあると蒸発しやすく、流体の量が減りやすい

以上のようなデメリットから、油圧機器には水ではなくオイルが用いられています。

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油圧回路の基本構成

油圧ポンプ

油圧ポンプの種類

油圧ポンプとは、エンジンやモータから発生する回転エネルギーを使って、ギアを回転させたりピストンを往復運動させたりすることにより、オイルを圧縮して油圧回路に送り出す機能を持った部品です。

油圧システムにおいて、油圧ポンプは人間の心臓に当たる部品であり、最も重要な部品です。油圧は以下のように、様々な種類が存在します。

  • 歯車ポンプ
  • ベーンポンプ
  • ねじポンプ
  • アキシャルピストンポンプ
  • ラジアルピストンポンプ

油圧ポンプの性能

油圧ポンプの性能は以下の2つの指標で表されます。

  • 体積(容積)効率
  • 機械効率

体積効率とは、実際に吐出される流量と理論流量との比で計算できます。実際の油圧ポンプは内部漏れが発生してしまうため、理論流量よりも吐出流量が減少します。その割合を体積(容積)効率と呼びます。

次に、機械効率とは実際の駆動動力と理論動力との比で計算されます。実際には機械同士の摺動摩擦抵抗などが発生するため、理論動力よりも実動力は増加します。

油圧アクチュエータ

油圧アクチュエータとは、油圧ポンプで高めた流体エネルギーを再び機械エネルギーに変換させて、実際の動作をさせるための部品です。主なアクチュエータには、油圧シリンダ・油圧モータ・揺動モータなどがあり、それぞれ以下の用途に用いられます。

  • 油圧シリンダ:往復運動用
  • 油圧モータ:回転運動用
  • 揺動モータ:揺動運動用

油圧シリンダの種類

  • ピストン形(単動式)
  • ラム形(単動式)
  • 片ロッド形(複動式)
  • 両ロッド形(複動式)

油圧制御バルブ

油圧制御バルブは、油圧回路内の作動油の流路をコントロールすることにより、アクチュエータの速度を制御するための部品です。

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