【MBD事例】自動車開発向け力学プラントモデル作成・基礎

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力学領域の物理プラントモデル

プラントモデルは複数の物理領域(力学、熱、流体、電気など)に分かれています。一度にすべての領域を説明すると理解することが難しくなってしまうので、1つずつの領域について説明していきます。

そこで、今回は「力学領域」についての内容となります。力学領域も大きく①並進運動と②回転運動の2つに分けられます。以下で、それぞれについて詳細を説明します。

並進運動の物理モデル

並進運動とはつまり運動方程式に支配された物理モデルのことを指します。運動方程式とは$$Ma=F$$で記述されます。\(M\)は質量、\(a\)は加速度、\(F\)は力です。

ここで、簡単な例でこの運動方程式を自動車に当てはめてみましょう。常に簡単な例で考えることは非常に重要です。

\(M=1000[kg]\)、\(F=1000[N]\)として、Excelを使って加速度\(a[m/s^2]\)をモデル化した結果がこちらです。

これは、この自動車が毎秒2[m/s]ずつ加速(等加速度運動)していくということを示しています。次に、加速度から速度を計算しましょう。加速度\(a\)と速度\(v\)の関係は以下にように決まります。$$v=\int adt+v_0$$ここでは、初速\(v_0=0\)[m/s]として計算します。

すると、この自動車の速度は60秒後には216[km/h]に達するという結果が得られました。

ここで、何か違和感を感じませんか?自動車の速度がこのように線形的に増加していくという結果は自分自身の経験則と一致しないのではないでしょうか。

その理由はこの物理モデルが実際の現象の一部しかモデル化できていないためです。残りのモデル化できていない部分は空気抵抗成分です。

空気抵抗が速度の2乗に比例すると仮定して、もう一度運動方程式を立ててみましょう。$$Ma=F-kv^2$$\(k\)は空気抵抗係数と呼ばれるもので、自動車の形状によって変化するパラメータだと思ってください。

これが空気抵抗を考慮したモデルで計算した結果です。かなり経験則に近い結果が得られたのではないでしょうか?速度が上がっていくにつれて空気抵抗成分も増加し、ある速度で頭打ちになっていきます。このように、精度の高い物理モデルを作るためには実際に起こっている現象をよく観察し、それをモデルに織り込む必要があります

ちなみに、MBD的な観点からこの結果を考察するとまた違う見え方になります。例えば、開発中の車の最高速度を120[km/h]に目標設定したとします。このモデルを使うことによって、最高速度120[km/h]に必要な空気抵抗係数\(k\)が求まるわけです。ここで決めた\(k\)が開発目標となり、なるべく空気抵抗の少ないボディ形状を作っていくのです。このようにMBDは開発のスタート段階での目標設定に用いられるのです。

回転運動の物理モデル

回転運動の物理モデルと基本的には並進運動と同じです。支配している物理法則が異なるだけです。

回転運動を支配している方程式は以下になります。$$J\frac{d\omega}{dt}=T$$\(J[\mathrm{kg\cdot m^2}]\)は慣性モーメント、\(\omega[\mathrm{rad/s}]\)は角速度、\(T[\mathrm{N\cdot m}]\)はトルクです。慣性モーメントは回転のしにくさを表すパラメータで回転しにくいものほど大きな値になります。

ここでもわかりやすい例を使ってイメージを掴みましょう。自転車に乗っている人がペダルを漕いでタイヤにトルクを伝え、そのトルクによってタイヤが回転するモデルを作ります。

また、回転数が上がると摩擦や空気抵抗による負荷トルクが発生し、その負荷トルクは回転数に対して線形特性という仮定を置きましょう。すると運動方程式は以下のようになります。$$J\frac{d\omega}{dt}=T-h\omega$$\(J=5\)、\(T=20\)、\(h=1\)として、Excelでシミュレーションしてみます。

最初はどんどん加速していきますが、タイヤの回転数が上がっていくと摩擦抵抗成分も増加していき、並進運動のときと同様に回転数がある値で頭打ちになっていきます

次に、慣性モーメントを\(J=5\)から\(J=2.5\)に半分にして同じシミュレーションをやってみます。ロードバイク のタイヤって一般的な自動車よりもタイヤがずっと細いですよね?あれは慣性モーメントを小さくするためです。慣性モーメントが結果にどのような影響を与えるか(ママチャリからロードバイク に乗り換えたらどうなるか)確認してみましょう。

慣性モーメントを小さくする(ロードバイク )ほうが最高回転数に到達するまでの時間が短くなったことがわかります。つまり、ロードバイク はママチャリよりも加速性能が優れているということがわかります。しかし、最高回転数(=最高速度)はママチャリと変わっていませんよね?この結果に驚く人もいるかもしれません。ロードバイク を買えば速く走れると思っているかもしれませんが、漕ぐ人のトルク(パワー)が同じであればロードバイク でも最高速度は変わらないんです。実際、ロードバイク は摩擦抵抗や空気抵抗がママチャリより抑えられているので、\(h\)の値も小さくなっているため最高速度も上がることが期待できます。

このように\(J\)と\(h\)を両方小さくできれば、最高速度に達するまでの時間を短く、さらに最高速度も速くすることができます。そのため、競輪選手やロードバイク に乗られる方は少しでも細いタイヤで前傾姿勢をとって速く走ろうとするわけですね。

身近なものをモデルを使って考えると、経験則と一致するケースとしないケースが出てきます。その違いをしっかりと考察することでモデルに足りていない部分や対象の理解が深まっていきます。MBDって面白くないですか?

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まとめ

今回は、力学領域の物理モデルについて例を交えながら説明してきました。要点を以下でまとめます。

  • 精度の高い物理モデルを作るためには実際に起こっている現象をよく観察し、それをモデルに織り込む必要がある。
  • MBDは開発のスタート段階での目標設定として用いられる
  • 身近な対象をモデル化をして考察することで、対象の理解が深まっていく

この記事を読んでMBDって奥深いな、面白いなと思っていただければ大変嬉しく思います。

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