【自動車工学】冷凍サイクルの高圧/低圧がバランスする仕組みを簡単解説

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自動車工学
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空調サイクルは様々な外乱によって、形状が複雑に変化していきます。そのときに、どのような原理でサイクルが変化し、冷媒の高圧と低圧がバランスするのかをモリエル線図を使いながら説明します。

外乱には冷媒側と空気側の2種類が存在するので、それぞれに対する外乱について解説します。

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冷媒側に外乱が加わったときの冷凍サイクルの変化

冷媒側に対する外乱をコンプレッサを使って説明します。

コンプレッサ回転数を変えて外乱を再現

コンプレッサへの外乱はコンプレッサ回転数の変化になります。詳細は理論は以前の記事で解説しているので今回は省略しますが、コンプレッサ回転数が変化すると冷凍サイクルの冷媒循環量が変化します。

可変容量型コンプレッサの場合は、回転数が一定でもDuty比が下がれば吐出流量が減少し、冷媒循環量が低下します。

ここからは、冷媒循環量が変化したときにモリエル線図の形状がどのように変わっていくかを図を使いながら説明していきます。

高圧バランス点の決まり方

まず、高圧\(P_H\)がどのようにバランスして決まるかを説明します。

図1:高圧のバランス点

図1は冷凍サイクルの高圧のバランス点を示した図になります。高圧のバランス点は冷媒が空気に放熱する熱量と空気が冷媒から受け取る熱量が釣り合うポイントでバランスします。ここで、コンプレッサ回転数が増加したとすると、冷媒側の仕事率が増加するので冷媒側のラインが上に上昇します。

図2:コンプレッサ回転数が増加したときの高圧バランス点の変化

図2は、コンプレッサ回転数が増加したときの高圧バランス点の変化を示しています。冷媒循環流量が増加すると、バランス点が右上にシフトするため高圧\(P_H\)は増加します。

低圧バランス点の決まり方

次に、低圧\(P_L\)のバランス点がどのように決まるかを説明します。

図3:低圧のバランス点

低圧も高圧と同様に、冷媒が空気から吸熱する熱量と空気が冷媒に吸熱される熱量が釣り合う点で低圧がバランスします。ここで、再びコンプレッサ回転数を増加させるとどのように変化するでしょうか。

図4:コンプレッサ回転数が増加したときの低圧バランス点の変化

サイクル中の冷媒循環量が増加すると、エバポレータもコンデンサ同様に吸熱量が増加します。そうなると、冷媒側のラインが上に上昇し低圧\(P_L\)のバランス点が左上にシフトします。つまり、低圧\(P_L\)は減少する方向に変化していきます。

モリエル線図が外乱によってどのように変化するか

最後に、コンプレッサ回転数が増加することによってモリエル線図がどのように変化するのかを説明します。コンプレッサ回転数が増加してサイクル中の冷媒循環量が増加すると、高圧は上昇し、低圧は減少していきます。

図5:コンプレッサ回転数が増加したときのモリエル線図の変化

コンプレッサ回転数が増加すると、モリエル線図は図5のように変化します。高圧が上昇し、低圧が低下するので縦長のモリエル線図に変化していきます。

モリエル線図が縦長になるほどコンプレッサ動力\(L[\mathrm{kW}]\)は増加していきます。\(L\)は$$L=G\cdot(h_b-h_a)$$で計算できるので、コンプレッサ回転数が増加すると冷媒循環量流量\(G[\mathrm{kg/s}]\)も比エンタルピー差\(h_b-h_a[\mathrm{kJ/kg}]\)も両方増加するため、動力\(L\)は大きくなります。

また、サイクルの効率を示すCOPも$$COP=\frac{h_a-h_d}{h_b-h_a}$$で定義されるため、\(h_b-h_a\)が大きくなるとCOPは低下していきます。感覚的に、コンプレッサをたくさん回すとその分動力も大きくなり、効率も低下していくことがわかるかと思いますが、感覚と理論がちゃんと一致しているということが重要であり、物理学の面白さでもあります。

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空気側に外乱が加わったときの冷凍サイクルの変化

次は、空気側に対する外乱をコンデンサとエバポレータを使って解説します。

コンデンサに対して外乱を加えた場合

まずはコンデンサに対する外乱についての解説です。コンデンサに対するはコンデンサ前空気温度とコンデンサ通過風速の2つがメインの外乱になります。

コンデンサ前空気温度が上昇したケース

コンデンサ前空気温度が上昇したケースを考えてみます。例えば、コンデンサの前面にラジエータが配置されている場合は、ラジエータの放熱量によってコンデンサ前の空気温度が変化します。ここでは、エンジン負荷が増加しラジエータ放熱量が増加したと仮定しましょう。

伝熱工学の基本法則から$$Q_{cond}=h_{cond}\cdot A_{cond}\cdot(T_{ref}-T_{air})$$が成り立ちます。\(Q_{cond}[\mathrm{W}]\)はコンデンサ放熱量、\(h_{cond}[\mathrm{W/K/m^2}]\)は熱伝達率、\(A_{cond}[\mathrm{m^2}]\)はコンデンサ伝熱面積、\(T_{ref}[\mathrm{K}]\)はコンデンサ前冷媒温度、\(T_{air}[\mathrm{K}]\)はコンデンサ前空気温度です。ここで、コンデンサ前空気温度である\(T_{air}\)が上昇したとします。

図1:コンデンサ前空気温度が上昇したときのバランス点の変化

すると、温度差が縮小するのでコンデンサ放熱量\(Q_{cond}\)は減少します。つまり、図1のように空気側のラインが下方向に下がるため、高圧のバランス点は右下にシフトします。したがって、コンデンサ前空気温度が上昇すると冷媒の高圧は上がります。

コンデンサ通過風速が増加したケース

次に、コンデンサファンの回転数を上げて通過風速が上がったケースを考えます。

図2:コンデンサ通過風速が増加したときのバランス点の変化

コンデンサ通過風速が増加すると、熱伝達率\(h_{cond}\)は上昇します。したがって、風速が上がるとコンデンサ放熱量\(Q_{cond}\)は増加し、空気側のラインは上方向に変化していきます。その結果、冷媒側と空気側とのバランス点は左上方向にシフトし、冷媒の高圧は低下していきます。

エバポレータに対して外乱を加えた場合

続いてはエバポレータについてです。エバポレータもコンデンサと同じ考え方で説明が可能で、外乱はエバポレータ前空気温度とエバポレータ通過風量です。

エバポレータ前空気温度が低下したケース

冷房を長時間効かせて、徐々にエバポレータ前の空気温度が下がってきたケースを考えます。コンデンサと同じように吸熱量\(Q_{evap}\)は$$Q_{evap}=h_{evap}\cdot A_{evap}\cdot(T_{air}-T_{ref})$$が成り立ちます。\(Q_{evap}[\mathrm{W}]\)はエバポレータ放熱量、\(h_{evap}[\mathrm{W/K/m^2}]\)は熱伝達率、\(A_{evap}[\mathrm{m^2}]\)はエバポレータ伝熱面積、\(T_{air}[\mathrm{K}]\)はエバポレータ前空気温度、\(T_{ref}[\mathrm{K}]\)はエバポレータ前冷媒温度です。

冷房が効いて\(T_{air}\)が下がってくると、温度差\(T_{air}-T_{ref}\)が縮小するため吸熱量が減少します。

図3:エバポレータ前空気温度が減少したときのバランス点の変化

すると、図3のように空気側のラインが下方向に下がるため、低圧のバランス点は左下にシフトし、低圧\(P_L\)は減少します。

エバポレータ通過風量が増加したケース

次は、逆に冷房の効きが悪く風量を増加させるシーンで考えます。風量を増加させるとエバポレータの熱伝達率\(h_{evap}\)が上昇するため、吸熱量\(Q_{evap}\)も増加します。

図3:エバポレータ通過風量が増加したときのバランス点の変化

\(Q_{evap}\)が増加するので、空気側のラインが上に上がります。その結果、低圧のバランス点は右上にシフトし、低圧\(P_L\)は上昇していきます。

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