冬は自動車の燃費が夏より約30%も悪くなる
冬は夏に比べて、自動車の燃費が約30%も悪化すると言われています。
今回は、冬に燃費が悪化する6つの原因について解説をします。
冬にガソリンの減りが早くなる原因6つ
酸素密度上昇による燃料噴射量の増加
1つ目は、酸素密度上昇による燃料噴射量の増加です。
ガソリンエンジンは理論空燃比で燃焼するように制御
ガソリンエンジンの場合、排気系に取り付けられている三元触媒でNOxやHCを浄化するためにガソリンと空気を理論空燃比になるように制御をしています。
ここで、理論空燃比とはガソリンと空気(酸素)がちょうど反応するときの比率のことであり、ガソリン1に対して、空気14.7の比率のときにどちらも過不足なく反応します。
排気系にはO2センサ(ラムダセンサ)が取り付けられており、そのセンサでO2の量をセンシングしてフィードバック制御をしています。
例えば、理論空燃比で燃料していれば燃料後にO2は存在していないので、O2センサで検出されません。しかし、空気(酸素)が過剰な場合には、燃焼後にO2が余ってしまうのでO2センサで検出されることになります。すると、制御系はガソリンの量が少ないと判断し、ガソリンの噴射量を増やそうとします。
気温が下がると空気(酸素)の密度が増加
冬で外気温度が低いと空気の密度が上がります。つまり、同じ体積の空気をエンジンが吸い込んだとしても、そこに含まれる酸素分子の数は異なります。空気の温度が低ければ低いほど、同体積あたりの酸素分子数は多くなるのです。
したがって、冬は理論空燃比にするために必要なガソリン量が多くなるということです。そのため、冬は夏よりも燃料噴射量が増えてしまうのです。
暖房を使用することによる燃料消費量の増加
2つ目は、暖房を使用することによる燃料消費量の増加です。
エンジン車やハイブリッド車の場合、暖房は温められた冷却水をHVAC内にあるヒータコアに流し、車室内の空気と熱交換させています。
この冷却水を温めるために余分に燃料を消費してしまうのです。暖房によって燃料を余分に消費する主なシーン2つあります。
運転開始直後の冷却水の暖機運転
1つ目のシーンは、運転開始直後の冷却水の暖機運転です。運転開始直後の冷却水はまったく温まっていないので、それをヒータコアに流しても暖房できません。そこで、燃料を多く消費することによって早期に冷却水を暖機するのです。
アイドリングストップ時間が短くなる
2つ目は、アイドリングストップ時間が短くなることです。アイドリングストップしているとエンジンが停止しているため、冷却水温度が徐々に下がってきます。それを防ぐために、ある一定の温度を下回るとアイドリングストップが解除されてしまうのです。
ハイブリッド車の方が暖房による燃費悪化率が高くなる
暖房を使用することによる燃費の悪化率は、エンジン車よりもハイブリッド車の方が大きくなります。
ハイブリッド車の場合は、暖房を使用していないときはバッテリの電力を使ったEV走行を定期的にしています。しかし、暖房を使用するとバッテリが充電されているにもかかわらずエンジンを駆動させて、冷却水の温度を上げなければいけません。
したがって、EV走行できるのにわざわざガソリンを使うことになるので、ハイブリッド車にとっては非常にもったいない状況となります。
除湿(曇り止め)によるコンプレッサ動力の増加
3つ目は、除湿(曇り止め)によるコンプレッサ動力の増加です。
暖房だけをしていると、湿度が高く気温が低い日はフロントガラスが曇ってきます。その曇りを取るためには除湿が必要ですが、その除湿をするためにはコンプレッサを駆動させなければなりません。
エンジン車ではコンプレッサが負荷トルクを発生させる
コンプレッサが駆動することによって、エンジンには負荷トルクが掛かるので燃費が悪化するのです。
エンジンとコンプレッサはプーリーベルトとマグネットクラッチによってつながっており、マグネットクラッチが締結された状態(A/CスイッチがON)でエンジンが回転すると、コンプレッサも回転して負荷が発生します。
ハイブリッド車・電気自動車ではバッテリ残量の低下
ハイブリッド車で電動コンプレッサが搭載されている場合も同様です。電動コンプレッサが駆動すれば、その分バッテリに蓄電されている電力を消費します。バッテリの残量が減ればエンジンの稼動時間が増加するので結果的に燃費悪化につながります。
オイルの粘性増加による機械抵抗の増加
4つ目は、オイルの粘性が増えることによる機械抵抗の増加です。
冬はエンジンオイルやATFオイルなどのオイル類の温度も下がります。一般的に、オイルは温度が下がると粘性が増えます(オイルが硬くなる)。粘性が増えることによって、機械抵抗が増加し燃費を悪化させます。
機械抵抗が増えると、走行に使える有効的な仕事量が減少するため、より多くの燃料を消費してしまうのです。
低温によるタイヤの転がり抵抗の増加
5つ目は、タイヤの転がり抵抗係数の増加です。
タイヤの転がり抵抗は温度によって変化し、温度が低いときほど抵抗が上がります。したがって、冬は夏よりもタイヤでのエネルギーロスが増えてしまうのです。
また、スタッドレスタイヤを装着することも燃費悪化につながります。スタッドレスタイヤはノーマルタイヤよりも転がり抵抗係数が高いため、気温が上がってきたら早めにノーマルタイヤに戻すことをオススメします。
低温によるバッテリの内部抵抗の増加(ハイブリッド・電気自動車)
6つ目は、ハイブリッド車や電気自動車に限定されますが、バッテリの内部抵抗の増加です。
バッテリは温度が低くなると内部抵抗が増加する傾向にあります。内部抵抗が増加すると、電圧降下量が増加し、消費電流が増えてしまうです。
オームの法則から、電圧が下がると同じ負荷を与えたときの消費電流量が増加することがわかります。それと同じ理屈で、バッテリの内部抵抗が増えると持ち出される電流が増え、充電が早く減ってしまいます。
ハイブリッド車の場合は、充電が早くなくなるとエンジンの稼動率が上昇し、燃料消費量が増えてしまいます。また、電気自動車の場合はダイレクトに航続距離が低下してしまいます。
冬の燃費悪化を少しでも防ぐ対策法
フロントガラスが曇ったときは除湿暖房する前に外気導入する
1つ目の対策は、フロントガラスが曇ったときは除湿暖房運転(ACボタンを押す)を行う前に内気循環から外気導入に変えることです。
内気循環で暖房していると、車室内の湿度が上がりやすくなるため曇りやすいです。そこで、外気を導入して乾いた空気を導入すると曇りが取れやすくなります。
最初は外気を導入して、それでも曇りが取れなければ除湿運転をするというような順番にしておけば、極力コンプレッサ動力を減らすことができます。
冬が終われば早めにノーマルタイヤに戻す
2つ目の対策は、冬が終われば早めにノーマルタイヤに戻すことです。
上記でも説明したように、スタッドレスタイヤの転がり抵抗はノーマルタイヤよりも高いため、燃費が悪化してしまいます。
もちろん雪が降っている間はスタッドレスタイヤを装着すべきですが、春になって暖かくなれば早めにノーマルタイヤに戻しましょう。
急加速を避けるために穏やかなアクセルワークを心掛ける
3つ目の対策は、穏やかなアクセルワークを心掛けてなるべく急加速を避けることです。
この対策は冬に限らず年中有効な対策になります。急加速をすると車両には大きな慣性力が発生し、それが抵抗になってしまいます。
例えば、慣性の法則によって止まっている車両はそこに留まろうとする慣性力が働いています。急加速をすると、その力に逆らって車両を加速させなければいけないのです。
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